横浜「カジノ誘致」対立の内幕(1)日本は既に世界一の「ギャンブル大国」

 横浜市の林文子市長がカジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致を正式表明したと思えば、予定地となっている山下ふ頭の港湾事業者を束ねる「ハマのドン」こと藤木幸夫・横浜港運協会会長がカジノ反対派の音頭を取る形で、「命を懸けて反対する」と応じたことで、横浜は賛否入り乱れて大いに揺れている。
 
 林市長がIR誘致の理由として、将来的に厳しい財政状況の打開を挙げれば、藤木氏は「山下ふ頭をバクチ場にしない」と応じる。IR誘致を巡る賛否を代表する意見対立だ。
 
 今回の騒動、分かりやすい対立図式とあって、マスコミ各社がこぞって報道。街頭インタビューでの意見も取り上げられた。反対派からは「ギャンブル依存症を助長させる」「治安が悪化する」「青少年への影響が心配だ」など、賛成派は「地域経済の活性化」「税収が増える」「観光客が増える」というのが主だった意見として紹介された。

 報道をまとめればこういうことになる。だが果たしてどうなのだろうか。中には「カジノ=悪」といった先入観にとらわれた回答があるようにうかがえた。

「よくある議論ですが、500万人超と、世界で最も多くのギャンブル依存症患者を抱える日本は、既にして『ギャンブル大国』なんです。理由はズバリ、パチンコ・パチスロが既に氾濫しているから。パチンコ・パチスロは国際的に見ればカジノに置かれるギャンブル用電子的ゲーミングマシンに類され、オーストラリアのゲーム機械協会が過去に取った統計によれば、全世界の設置台数の約6割が東アジアに集中している。この東アジアのうち、日本を除いた国はいずれもカジノを主要産業とする小さな国もしくは行政区なので、ギャンブル用電子的ゲーミングマシンは日本に特に集中しており、1台当たりの人口で言えば日本は28人で、小国や行政区を除くと、オーストラリアの118人、イタリアの145人を大きく引き離しています」(カジノ情勢に詳しいジャーナリスト)

 つまりは、既にしてギャンブル依存症が発生しやすい土壌が黙認されているのだ。だいたいどこの駅前にもパチンコ屋がある環境で、当面は「大都市2に地方1」と数と地域が限定されたカジノがギャンブル依存症を「助長する」というのは、既にある現実を見過ごしたものとは言えないだろうか。

 では、ギャンブル依存症患者が生まれないようにギャンブルを取り上げればいいという議論もあるが、これは既にあるギャンブル依存症の対策には全くならない。

「例えばアルコール依存症患者からアルコールを取り上げれば、別の薬物依存に走る現象が確認されており、依存症は別の依存症との間で行き来したり、併存したりする症状(これを「クロス・アディクト」というが)を示すものなので、実はギャンブル依存症はギャンブル内部でのみでは語れない社会的病理現象とも言えんです」(同前)

 だから、パチンコ・パチスロを一方的に悪と見做す反対意見も、それはそれで、純血主義の単なる“毛嫌い”の域を出ないことになる。

(猫間滋)

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