佐藤治彦「儲かるマネー駆け込み寺」医療費控除の対象は「年間10万円以上」だけではない

 医療費控除のことは多くの人がご存じだろう。病院や薬局で払った医療費が年間で10万円以上になったら、確定申告をすると所得税が戻ってくるし、住民税も安くなる。

 また、医師の処方箋がなくても自分の判断で購入したかぜ薬など、ドラッグストアで売っている薬や病院に行くためにかかった公共交通の交通費(領収書は必要ありません)など、幅広い範囲が含まれます。

 歯科医療も入院中の食事代、治療に必要な松葉杖などの器具、義手、義足はもちろん、時にはメガネや補聴器なども対象になる場合があるほど。

 病院などで行っている高額の人間ドックの費用は原則、医療費控除の対象にはなりませんが、例外もあります。それは、人間ドックによって重大な病気が見つかって、引き続き治療に入ったケースです。その場合、人間ドックの費用も医療費控除の対象に含めていいとされています。

 重大な病気の一例を上げておきたいと思います。

【がん全般】
【心疾患】
【脳血管障害】
【高血圧】
【脂質異常症】
【糖尿病】

 また、メタボ(メタボリックシンドローム)と診断された場合も、生活習慣病との関連が認められているので、人間ドックの費用も医療費控除の対象となるのです。人間ドックは数万円、時には5万円を大きく超える金額が必要ですから、すぐに医療費控除の対象となってしまいます。

 自分だけではなく、生活費の面倒をみている家族、例えば仕送りをしている大学生の子供などの医療費も合算して申告できるので、医療に関する領収書は捨てないでおきたいもの。ドラッグストアなどは領収書でなくレシートで大丈夫だ。

 年の初めに「今年の医療費の領収書は、この袋に入れる」と決めておき、年末が近づいたら一気に計算してしまえばいい。今のドラッグストアは薬類だけでなく、食品や日用品など、ありとあらゆるものを売っている場合も少なくない。あとで計算が面倒にならないように、もらった領収書のうち、薬類など医療費控除の対象になるものを計算して裏書きしておくとか、可能であれば、レジで医薬品とそれ以外のものと別々に会計してもらい、医療費関連のレシートだけ取っておくと、なおさら便利だ。

 それでも、うちの家族は10万円なんて医療費はかからないなぁ、と思っている人に覚えておいてもらいたいのは、総所得金額200万円未満の人は、10万円ではなく、総所得金額の5%以上が対象だということ。

 例えば年200万円の年金をもらっている人は、そこから公的年金控除の110万円を差し引くと、所得は90万円。所得90万円の5%なら4万5000円。なので医療費が4万5000円以上なら、申告をすれば税金が戻ってくるのだ。

「俺は医者嫌いだから、病院にはほとんど行かないよ!」という人でも、通常の医療費控除を申告しないのならセルフメディケーション税制の対象になることもある。これは健康診断やがん検診、予防接種など健康に注意する行為を行った人が、ドラッグストアなどで対象となる医薬品を年間で1万2000円以上買った場合に申告すれば、税金が戻ってくる制度である。

 今週は健康にまつわる節税の話ばかりしてしまってちょっと暗かったよね。しかし、これは大切だと思っても、いざという時には忘れてしまうものなので、このページを捨てないで取っておいてもらうと、あとで役に立つよ。

 人間は体が資本、健康第一。でも、ガタがきてしまった時に財布にあまり影響のないようにするために覚えていてほしいです。

 今週も読んでくれてありがとう。

佐藤治彦(さとう・はるひこ)経済評論家。テレビやラジオでコメンテーターとしても活躍中。著書「素人はボロ儲けを狙うのはおやめなさい 安心・安全・確実な投資の教科書」(扶桑社)ほか多数。

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