QRコードで費用削減、都営地下鉄のホームドアに隠された画期的アイデア

 今やJRや私鉄各社も次々と導入しているホームドア。国土交通省の調べによると、設置駅数は21年度末時点で1002駅。普及率はまだ1割程度だが、この10年で倍増しており、今後さらに増加を続ける見通しだ。
 
 ホームドアは線路への転落防止に大きな効果を発揮しているが、ネックとなるのは高額な設置コストで1間口あたりの費用は200万円から600万円。スライド式やロープ式やバー式など複数の種類があるが、どのタイプにするか、さらにホームの構造や長さによっても総額の費用は大きく異なる。

「設置費用の相場は、首都圏で主流のスライド式だと1駅4~5億円。ただし、多くの鉄道会社は車両に付けた無線と連動させるやり方を採用しているため、これの設置費用だけで別に1編成で数千万円かかります」(鉄道専門誌編集者)

 そのため、鉄道会社全体だと列車の改修費だけでも数十億円になることも。だが、画期的な新システムを採用することでコスト削減に成功したのが都営地下鉄浅草線だ。

 11月に全駅のホームドア整備が完了した同線は従来の無線ではなく、QRコードを読み取って開閉する方式を採用。車両のドアなどに大きなQRコードが貼られているのはそのためで、費用はわずか270万円。もし無線式なら20億円かかったと言われており、約740分の1という費用の大幅圧縮を実現させた。しかも、これは職員のアイデアだという。

「ただし、QRコードのホームドアはJR東海や小田急、京急、神戸市営地下鉄などの一部の駅で採用されており、この職員がシステム自体を考案したわけではありません。それでも通常ならボーナスの大幅アップや昇給が期待できましたが、都営地下鉄は一部の嘱託職員やアルバイト以外は公務員。そのため、残念ながら賞与・昇給に反映される可能性は低いでしょうね」(同)

 さすがにこの時ばかりは「民間企業だったら…」と思ったに違いない。

マネー