折りたたみスマホの普及が伝わる北朝鮮だが、商いの現場でQRコードでの決済が行われているようで…。まさかそんなにデジタル社会が進んでいるというのか。伝えたのは、北朝鮮ニュース報道の「デイリーNK」の中国語版。そして記事をちゃんと読めば、もちろんデジタル技術の普及で便利な生活…などといったものとは全く異なることがわかる。
「記事のタイトルは『北朝鮮、電子決済市場を拡大』というものですが、なんのことはない、市場運営の調整と穀物価格の統制の必要から、政府が電子決済の拡大を指示したというもので、金の流れを把握するために、現場で電子決済が強制されているという内容です。しかも小規模事業者で携帯電話を所有している人は少ないにもかかわらず、トウモロコシ1、2キロの支払いにまでQRコードの使用を求められるという、関係者が嘆息したようなコメントが添えられています」(全国紙記者)
韓国の中央日報もこの件について伝えているが、同紙の記事には、北朝鮮のテレビに映ったスマホを使用している女性の画像が掲載されている。そしてこのスマホが、折りたたみ式のフォルダブル・スマホなのだ。フォルダブル・スマホは韓国のサムスンなどが先を行っていて、日本でもあまり普及は進んでいない。普及率だけで言えば、もしかしたら北朝鮮の方が上なのかもしれない。
23年6月に韓国人の人権団体が発表した「北韓インターネット報告書」によれば、都市部では携帯電話の普及率は7~90%という。ずいぶん幅があるが、平壌とそれ以外の都市の違いなのだろう。だが先のQRコードの記事と同日の11月29日付けのデイリーNKの記事によれば、その平壌では携帯電話のひったくりが横行しているとの記事が。「路上で使用している人が多いため、犯人にすればターゲットだらけだ」とあるが、携帯電話とはそもそもそうやって使用するものだ。また金正恩総書記の肝いりで建設されたタワマンが、電力不足から「エレベーターは5時間待ち」といった記事もあり、結局はトホホな現実ばかり。
また、携帯はいくらか普及はしていても、やはり普通の携帯とは違う。ネットがつながらないのだ。
「先の報告書によれば、ネットを利用したという人はほとんどいないとしています。北朝鮮でのネット利用は、基本は情報収集や研究のためで専門家に限られています。しかもネット利用は許可制で、使うには監視が両脇に付き、自由に使えるのはよほどの特権階級だけだといいます。その代わりイントラネットがあって、そこでは携帯、パソコン、タブレットといった端末を接続して使えます。また販売店でソフトをダウンロードして、テロリストと戦うアメリカ製のシューティングゲームのソフトをプレイできるとも言われています」(同)
SF的なアニメ作品などでは、核戦争後の、新しい技術と古い技術が混在する社会が描かれたりするが、そんな世界と北朝鮮社会を比べてみたくなるのは、もちろん美化し過ぎだろう。
(猫間滋)