北朝鮮「アジア大会」で金11個も男子は1個のみ…帰国後に待ち受ける天国と地獄【2023年10月BEST】

 10月頭に閉幕した杭州アジア大会で、北朝鮮は男子サッカーの威嚇行為などネガティブなニュースが先行した。メダル獲得数ランキングは前回大会と同じ10位だが、その内容が全く違っていたという記事。帰国後の彼らの待遇を知れば、ブチ切れるほど必死になる理由がよくわかる。(以下は10月21日配信記事を再録)

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 杭州アジア競技大会が16日間の日程を終え10月8日、閉幕した。
 
 今大会で北朝鮮は陸上をはじめ、サッカー、バスケットボール、バレーボール、水泳など、16の競技に出場。中国に総勢185人の選手団を送りこんでいた。
 
 メダルの数を見ると、北朝鮮は金11、銀18、銅10個で国別のランキングでは総合10位だが、11個の金メダルのうち男子選手が獲得したのはわずか1個。残り10個はすべて女子選手が手にしたことで、メダリストたちには帰国後「天国と地獄が待ち受けている」と複数の韓国メディアが報じている。

 北朝鮮のスポーツ事情に詳しいジャーナリストが解説する。

「北朝鮮では、かつて金総書記が『体育人は金メダルで祖国を守り、共和国国旗を世界で最も高くはためかせるため体育戦士にならなければならない』といったスローガンを掲げたこともあり、いわば『金メダル第一主義』の国なんです。なので、悲しいかな金メダル以外のメダルはあまり評価されません。これは『労働新聞』『朝鮮中央通信』など、北朝鮮メディアによる報道においても一目瞭然で、たとえば、金メダル第1号となった女子射撃団体及び、女子体操(跳馬と段違い平行棒)では、翌日の新聞・テレビが『栄誉の』という最高の枕詞付きで大々的に報道しています。しかし、銀や銅メダルの選手は単体では扱われず、金メダル記事の最後にさらっと触れられる程度の扱いで終わっています。この差をみても、いかに北朝鮮にとって金メダルが重要な意味を持つかがわかるはずです」

 しかも、負けて銀メダルに終わった場合は、決勝で対戦した相手国の国名すら記載されないばかりか、試合結果も報じられないことが、ごく当たり前だというから驚くばかりだ。

 そして今回、金メダルを獲得した女子選手は破格の待遇を受けているようで、中国を出国する北朝鮮選手団の様子を報じた中国メディア「捜狐」によれば、「(中朝国境の)丹東では、体操女子チャンピオンのアン・チャンオクらが、家族や友人へのお土産にいくつかの革製品を購入。店の人に手を振って微笑む選手もいた」と上機嫌だったいう。

「おそらく金メダリストらは、政府からの報奨金のほか、車や家も送られ、家族含め平壌の戸籍を取得することが許されるはずです。他の選手も褒美はあるが、仕事で昇進する程度です。逆に、準々決勝で日本に負けたサッカー代表選手などは、希望する職種に就くことはおろか、軍隊にいくことも覚悟しなければならないと報じられています。だからこそ、選手たちは他国にどう思われようが、勝つためにはラフプレーでも何でもやる。つまり北朝鮮には、本来のスポーツマンシップにもとづく精神はなく、国家がそれを形成しているということ。権力者が変わらない限り、こうした選手たちの行動が変わることはないでしょう」(同)

 さて、帰国したメダリスト以外の選手たちの運命やいかに。

(灯倫太郎)

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