北朝鮮「ミサイル乱発」の裏で金正恩にひたひたと忍び寄る「斬首作戦」

 3日朝に続いて、夜にも4回目の弾道ミサイルを発射したと思われる北朝鮮。海上保安庁は航行する船舶に対し、落下物発見の際は近づくことなく通報するよう呼びかけているが、

「今年に入り北朝鮮による、日本海に向けたミサイルの発射は50発以上。特に日本海で米空母ロナルド・レーガンが参加した米韓合同演習中(9月25日〜10月14日)には、計15発の弾道ミサイルが発射され、先月31日から始まった米韓軍の大規模合同訓練『ビジラント・ストーム』では、それがさらに激化している。連日の発射を受け、米韓両軍は訓練延長を決定しましたが、両者ともに一歩も引く構えがないことから、一触即発状態が続くと考えられます」(軍事ジャーナリスト)

 北朝鮮による連日のミサイル発射はビジラント・ストームへの対抗措置であることは言うまでもない。しかし、はたしてそれだけなのか。前出の軍事ジャーナリストは、「韓国国防筋からの情報」として、こう語る。

「ビジラント・ストームは、2015年に米韓両国により策定された『作戦計画5015』に基づき実施されていた空軍主体の合同演習を、名称を変更して復活させたものです。17年12月、北朝鮮による6回目の核実験と、長距離弾道ミサイルの発射を受け、米韓8つの空軍基地からF-22×6機、F-35A×6機、F-35B×12機の計24機のステルス戦闘機、超音速戦略爆撃機(B-1B)2機、加えて230機の作戦機と1万2000人の兵員が動員され、最大規模で実施されましたが、今回はそれを上回る規模だとされています。そして、この“空軍主体の演習”こそが、金総書記にとって最大の脅威となっているようです」

 というのも、今回の演習で使われている垂直離着陸が可能なF-35Bは空母から使えるうえ、レーダーを無力化させ、地対空ミサイル攻撃を妨害、さらには防空網をかいくぐるEA‐18Growlerのほか、地下60メートルまで攻撃可能なGBU-57という強力な爆弾を搭載。これらの爆弾だけで平壌の指揮所や地下要塞、核ミサイル基地を焦土化できる威力があるというのだ。

「つまり、地上に降り立つまでもなく、空から『斬首作戦』が決行できるということ。しかも、先月30日の軍司令部発表によれば、前日の29日には京畿道平沢市にある米軍基地で『チークナイフ』という訓練が行われたとのこと。これは、米韓両国の特殊部隊が敵地に潜入し、さまざまなミッションを遂行することを目的とした訓練です。今回は米空軍の特殊作戦飛行団などが投入され、夜間に行われたようですが、この訓練の原型になっているのが、米海軍特殊部隊ネイビー・シールズの『チーム6』。米軍最強のエリート集団とも言われ、2011年に隠れ家に潜むオサマ・ビンラディンを奇襲、殺害したことで知られています。つまり、バイデン大統領が指令を下せば、彼らがネットワークを駆使し、即座にターゲットの居場所を確認、ミッションが発動されることになります。おそらく、金氏はそれに恐怖を覚えているのでしょう。その焦りがミサイルの連続発射に繋がっているとも考えられます」(同)

 武力による挑発がこれ以上エスカレートしないことを願うばかりだ。

(灯倫太郎)

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