「VIVANT」“別班”の正体とは!? 途轍もない日本の秘密組織(2)「どこを刺せば4秒で死ぬか」

 元警視庁刑事で犯罪心理学者の北芝健氏は言う。

「陸軍中野学校から別班へと継承されていったのは諜報や謀略、情報収集のノウハウに限りません。陸軍中野学校では、門外不出の医術を扱っていて、ドイツやロシアが手に入れようと、さまざまな工作を仕掛けてきたとか。驚くことに、100歳になろうかという陸軍中野学校の生き残りが、別班のメンバーに医術を伝えていたそうです」

 そんな別班と互角に渡り合う諜報組織が日本の公安警察だ。「VIVANT」では、警視庁公安部外事第4課に所属する野崎守(阿部寛)が、「バルカ共和国」を舞台に、スパイさながらの活躍を見せる。

「ドラマでは新庄浩太郎(竜星涼)という頼もしい同僚がいましたが、外事警察が外国で情報収集を行う際、私がアフリカ某国の日本大使館に勤務していた時のように、おおむね単独行動となります。1人なので、どんな危機にも冷静に対処し、己の度胸と才覚で乗り切らなければなりません。保護対象者を送り届けるために装甲トラックで強行突破したり、国境を越えるためにラクダで砂漠を縦断するなど、大胆な作戦を実行に移せる野崎のような人物こそ適材と言えるでしょう」(勝丸氏)

 むろん、誰でも公安警察になれるわけではない。あらゆる能力が試されるのだ。

「選抜基準は厳しく、ハニートラップを警戒して、女性関係にだらしない独身男性に声がかかることはありません。採用されるのは、愛する家族がいて、日本のために身を粉にして働けるプロ中のプロ。射撃の腕も重要で、拳銃操法の検定で上級は必須。これは、25メートル離れた人物の眼球を一発で撃ち抜くほどの技量が求められます。また、『どこを刺せば4秒で死ぬか』など、人間の急所も心得たものです」(北芝氏)

 実際、外事警察は海外でどんな活動を行うのか。

「在外公館の警備が主な任務となるため、スパイのように情報収集を行うことはありません」

 山田氏はこう前置きして次のように語る。

「本来の仕事ではないものの、日本の本庁から『この件について調べてくれないか』と依頼が来れば、個人の裁量で請け負うことも。例をあげれば、日本に違法薬物や不正な機械を密輸している組織、日本に特殊詐欺を仕掛けている犯罪グループなどでしょうか。16年には南アフリカの偽造クレジットカードで日本国内のATMから約14億円が不正に引き出される事件がありましたが、こうした犯罪の芽を摘むためにも、現地で情報収集を行っています。もちろん、捜査権はありません。そのため、犯罪組織に拘束されるようなことが起きても、自己責任で対処することになります」

 命懸けで暗躍する「日本人スパイ」は実在するのだ。

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