以前から問題視されている「撮り鉄」によるトラブルの数々。彼らの多くはルールを守っているが、一部の心ない愛好家が線路に立ち入って運行に支障を来したり、注意する駅員に逆ギレして暴言を浴びせる動画がSNSなどで多数公開されている。
鉄道各社にとっては大きな悩みのタネとなっているが、東欧ポーランドでは7月に刑法改正案が国民議会で可決。なかでも波紋を呼んだのは、駅や列車内など鉄道やその関連施設の撮影を制限するという法律だ。実際、現地では撮り鉄たちが治安当局に拘束されるケースが数多く報告されているという。
この「鉄道撮影禁止法」に対して同国の老舗鉄道誌の「シヴィアット・コレイ」は「深い懸念」と声明を発表。日本でも「東洋経済オンライン」が先月30日配信の記事でこの問題を取り上げ、日本の鉄道ファンの間でも話題となっている。
「戦時下のウクライナの物流を支えているのはポーランドからの貨物列車で、今年3月にキーウを訪問した岸田首相をはじめ各国首脳も特別列車で現地に乗り入れています。鉄道写真も機密情報と捉えれば撮影禁止も理解できますが、軍事衛星などからの解析ですでに丸裸も同然のはず。昔と違って法律で禁止にする必要性は感じません」(軍事ジャーナリスト)
かつての社会主義体制下では、多くの東欧諸国が駅・空港での写真撮影は原則禁止。ポーランド国民の間でもネット上では《ありえない!》《冷戦時代に逆戻り》など批判や皮肉めいたコメントが多数寄せられている。
「日本では撮り鉄にネガティブなイメージを持つ方が多いせいか、《ポーランドのように法律で撮影禁止にしろ!》などの過激な意見を見かけます。ただし、政治体制が変わって第二次世界大戦前のような軍国主義にでもならない限りは大丈夫だと思います」(同)
日本で撮影禁止法が施行される可能性はなさそうだが、旅行や出張でポーランドを訪れた際は注意したほうがよさそうだ。
(高島昌俊)