もうひとつの「米騒動」? 選手会長が奮闘した中日の「メシ改革」

 選手会長はつらいよ…。

 中日・柳裕也投手がおよそ2カ月ぶりの白星をつかんだ(9月3日)。というか、味方打線の援護に恵まれなかっただけで、柳自身はこれまでも好投を続けてきた。

「いつ、キレてもおかしくない状況でした。柳が自暴自棄にならないで本当に良かった」(名古屋在住記者)

 柳は自身の練習のかたわら、「チーム改革」にも乗り出していたそうだ。

「球場での食事のことですよ」(プロ野球関係者)

 中日の食事というと、立浪和義監督が白米禁止令を出し、「時代錯誤」「令和の米騒動」と揶揄されたばかり。しかし、柳の進めていた“食事改革”は違う。ナイトゲームの試合終了後、食事を摂るのに苦労している選手がいたため、「希望者だけでいいから、球場内で食べられないか?」と球団に提案していたのだ。

「試合後の食事は各自に任されてきたのですが、独身の選手は深夜に自炊をするのは大変です。外食もできますが、選手間の付き合いでアルコールも出るし、先輩がおごってくれるといっても気を遣ってしまいますからね」(前出・名古屋在住記者)

 柳は球団スタッフに球場で食事ができる利点だけでなく、他球団の様子も伝えていたという。柳は横浜高校、明治大学の出身。同校出身のプロ野球選手は多く、そのネットワークで伝え聞いた各球団の食事状況も伝え、「この部分はウチも取り入れましょう」とお願いしていたそうだ。

 おかげで定食などが振る舞われるようになったそうだが、食事改革を成し遂げた柳についてはこんなエピソードも聞かれた。

「約2カ月ぶりに勝利した試合ですが、7回途中でフェリスと交代しています。フェリスがゼロに抑えると、自ら歩み寄ってハグをしていました。ベンチの雰囲気を良くしようと必死です」(同前)

 食事改革は提案してすぐにまとまったわけではない。おねだりする選手から「いつできますか?」とせっつかれたこともあったという。ただ、間に立つ柳は、話を聞いてくれた球団スタッフの立場も分かっていた。

 気苦労の多い選手会長、ひょっとしたら「投げているほうがラク」なんて思っていたかもしれない。

(飯山満/スポーツライター)

スポーツ