猛虎再来だ!
阪神タイガースは、8月13日に行われたヤクルト戦に5-3で勝利し、連勝を10に伸ばした。阪神の二桁連勝は2007年以来16年ぶり。第一次岡田政権以来のことだ。
阪神はこれで6カード連続勝ち越しで貯金は今季最大の24。2位・広島とのゲーム差は8まで広がり、15日の直接対決に勝利すれば「マジック29」が点灯する。
「現在阪神は本拠地・甲子園球場を高校野球に明け渡し、長期ロードの真っ最中。とはいえ移動は新幹線のグリーン車か飛行機で、泊まるのも高級ホテル。京セラドームでのホーム試合もあるし、涼しい東京ドームやバンテリンドームでの試合もある。“死のロード”なんて言われたのは大昔の話で、蒸し暑い甲子園での連戦より快適でしょう」(スポーツ紙デスク)
野球をする環境で言えば、過去と比較しても数段恵まれているのは確かだが、それは他球団も同じ。それでは、阪神絶好調の理由はどこにあるのだろうか。
プロ野球評論家の高木豊氏は、14日に自身のYouTubeチャンネルを更新し、13日の岡田監督の采配について「次から次へと手を打ってくる」と絶賛している。
4−3と阪神リードで迎えた7回裏、阪神の攻撃の場面だった。一死一、三塁で打席には死球退場した梅野隆太郎に代わって途中からマスクを被った坂本誠志郎。初球ボールの後、2球目は坂本がセーフティスクイズを試みるもファウル。警戒したヤクルトバッテリーは1球はずし、カウントは2−1に。すると岡田監督はヒットエンドランを仕掛け、坂本がセンター前に打ち返して1点をもぎ取ったのだ。
高木氏はこのシーンについて「岡田監督の采配というのは、状況とか選手心理、相手ベンチの考えとか(を読む)。相手がウエストしたからエンドランに切り替えた。細かな采配だよね」と評したのだ。
事実、岡田監督は試合後に坂本の打席について「もう1点と思っていたので。ヤクルトのことだから初球は様子を見てくるだろうと思っていたけど」と口を開くと、エンドランについては「(ヤクルトバッテリーが1球)外したあとだったからね。エンドランの方が三塁ランナーはアウトにならないじゃないですか。スクイズやったらアウトになるけど、ハマればね」と種明かししたのだ。
「将棋が趣味という、岡田監督ならではの先の先まで読んだ作戦でしたね。そういえば前日12日のヤクルト戦では、6回裏、同点に追いついてなおも一死一、二塁と一気に逆転を狙える場面で木浪(聖也)が二ゴロ併殺に倒れた場面を高評価するという、謎の発言があったのです」(前出・スポーツ紙デスク)
岡田監督はその場面について「木浪のゲッツーが一番大きかったわ。あれで(打席の回らなかった)桐敷が2イニングいけたから」と評したのだ。
木浪が併殺に倒れなければ次打者の投手・桐敷拓馬に打順が回り、代打を送ることになる。すると投手を交代させねばならなくなる。
「阪神はこのところ中継ぎ陣が登板過多ですからね。10日の巨人戦では抑えの岩崎優をベンチから外して一足先に帰阪させ、11日には加治屋蓮、この日12日も島本浩也をベンチから外すなど、可能な限り3連投はさせない方針でブルペン陣に疲労を蓄積させないよう気を配っています。木浪併殺でイニングが終了したため、中2日空いていた桐敷に2イニング任せることができたのです」(前出・スポーツ紙デスク)
この日の試合は延長12回まで戦ったワケだが、桐敷が1イニングで降板していたら試合展開はどうなっていたことか。
阪神10連勝の裏には、岡田監督の数手先を読む用兵があったのだ。
(石見剣)