親分プリゴジンを裏切っていた! ワグネル新トップが口にする「ポーランド侵攻」

 自身の故郷であるサンクトペテルブルクに、ベラルーシのルカシェンコ大統領を招いて会談したプーチン大統領。会談の席で「ウクライナによる反攻は行われていない」と語るルカシェンコ氏に対し、プーチン氏は「いや、反攻は間違いなく行われている。だが、失敗している」として、現段階でもロシア軍が優勢な立場にあると改めて強調したという。

 現在、ワグネルを自国に受け入れているベラルーシでは、ワグネル指導のもとで合同軍事訓練がスタート。一方、国境を接する隣国ポーランドも、ワグネルがベラルーシに拠点を移動したことにより、国境付近の警備体制を強化。北東部に大隊を配備し、米、英、ルーマニア、クロアチアらの兵士と合同訓練を行うなど、臨戦態勢を敷いている。

 そんなベラルーシで、現在ワグネルを束ねているのが、プリゴジン氏に代わる新指揮官とされるアンドレイ・トロシェフ氏だ。

「トロシェフ氏は、ロシア内務省の元特殊緊急部隊要員として、チェチェン紛争やアフガン戦争に従軍。軍務が評価され『赤星勲章』という高位の勲章ほか、複数の勲章が授与されている退役軍人で、ワグネル創設の際にメンバーとして参加。その後、シリアのアサド政権を支える民兵組織のリーダーとして反政府勢力の掃討作戦にも携わったいわばワグネル生え抜きのリーダーだと言われています」(ロシアウォッチャー)

 ところが実は、このトロシェフ氏こそが政府に内通し、プリゴジン氏の反乱を事前にプーチン氏に伝えた「裏切り者」と報じたのが、ロシアの人権団体「グラグ・ネット」だ。

「同団体によれば、当時ワグネルの副官だったトロシェフ氏は、プリゴジン氏から反乱計画を聞かされたものの、自発的に参加を拒否。それだけでなく、自ら連邦保安局(FSB)や国防省に内部情報を伝えたというのです。結果、プリゴジンの乱は失敗に終わった。その後、ワグネル兵士35人がクレムリンに呼ばれ、彼がプーチン氏から次期ワグネル指揮官に命名されたというわけですが、つまり、これは密告したトロシェフ氏に対するプーチン氏のご褒美なのだと。もともと戦闘現場でも陣頭指揮を執っていたのはトロシェフ氏だとされますから、プーチン氏としてはプリゴジン氏を排除でき、トロシェフ氏を子飼いにできれば一挙両得と考えたとみて間違いないでしょう」(前出・ロシアウォッチャー)

 現在、ワグネルに在籍する戦闘員は約2万5000人。うち、1万人程度が隣国ベラルーシに駐留しているとみられるが、とはいえワグネルの幹部や戦闘員の中には、いまだプリゴジン氏に同調する兵士も少なくないとされることから、今後、内部分裂が起こる可能性も否定できない。

 冒頭の23日の会談の際、ルカシェンコ氏は「ベラルーシにいるワグネル戦闘員は西のポーランドに行きたがっている」と述べ欧米を牽制したが、今後ワグネルに何が起こり、どのような道を歩んでいくのか。その行方が気になるばかりだ。

(灯倫太郎)

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