遺言書で浮上!プリゴジン氏の息子VSワグネル新司令官の攻防勃発か

 ロシア正教で死後の節目となる40日を迎えた10月1日、搭乗機墜落で死亡したロシアの民間軍事会社ワグネル創設者エフゲニー・プリゴジン氏の追悼式が、出身地サンクトペテルブルクやモスクワなど各地で支持者らにより、しめやかに執り行われた。

 この日、テレグラムにアップされた映像には、サンクトペテルブルク市郊外の墓地で、祈りをささげるワグネル関係者らの中に、プリゴジン氏の母ビオレッタさんと息子パベル氏の姿もあったが、実は今この25歳になるパベル氏を巡り、ワグネル内のみならずクレムリンをも揺さぶる大きなうねりが起こっているというのだ。

「プリゴジン氏には妻のリュボフ・プリゴジナ氏との間に3人の子供がいるのですが、うち2人は娘でパベル氏は一人息子。実は2日に、ロシアのSNS『テレグラフ』の非公開アカウント『Port』が、独自入手したとするプリゴジン氏の遺言書のコピーを公開したのですが、なんとそこには『私の全財産をパベル・エフゲニエヴィチ・プリゴジンに遺贈する』との記述があり、ワグネル内部だけでなくクレムリンにも大きな激震が走ったようです」(ロシア情勢に詳しいジャーナリスト)

 3月2日に公証人が署名したとされるこの遺言書によれば、プリゴジン氏が所有する資産1億2000万ドル(約180億円)のほか、サンクトペテルブルクの住宅、さらには彼が代表を務めていたワグネルグループをすべて息子に相続させると記されているという。

「パベル氏は9月8日に遺産相続を申請したとの現地報道もあますが、ロシア国防省はプリゴジン氏が経営する食糧配給会社に対し、およそ810億ルーブル(約1200億円)の債務を抱えており、パベル氏はこれを全て受け取る意向を示しているようです。ワグネルの乱の際、プーチン氏は2022年5月から2023年5月までの間に、国防省から受け取っていた資金が総額で860億ルーブル(約1300億円)に上ると公表していましたが、さらに残金が810億ルーブルもあったことになりますからね。今後はこの支払いを巡って騒動が勃発するかもしれません」(同)

 さらに、最大の問題は遺言に記された「ワグネルグループを息子に相続させる」という文言だ。というのもクレムリンは先月29日、プーチン氏がワグネルの新指揮官となるアンドレイ・トロシェフ氏と会談した映像を公開。すなわちそれは、今後ワグネルがプーチンの下でロシア正規軍とともに、ウクライナ戦争の最前線に復帰することを意味する。だが、仮に息子がプリゴジン氏に代わる代表となれば、話は全く変わってくる。

「パベル氏がワグネルを引き継ぐかどうか現時点では未知数ですが、ただ、イギリス国防省によれば、ワグネルにはトロシェフ氏を『裏切り者』として忌み嫌う戦闘員も少なくないといいます。なぜなら、トロシェフ氏は『プリゴジンの乱』直後に、一度ワグネルを離れ、ロシア国防省系の民間軍事会社で働いていたようで、そんな人物が新指揮官になっても命令系統がうまく機能するかどうか疑問。加えて、ワグネル内部にはプリゴジン氏をカリスマとして崇拝する兵士も多い。つまりパベル氏の出方によっては、ワグネルの継承を巡り、一波乱二波乱起こる可能性も否定できないということです」(同)

 立つ鳥跡を濁さずと言われるが、プリゴジン氏の場合には、死してもなおトラブルが尽きないようだ。

(灯倫太郎)

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