試合時間は2時間半に!? NPB「ピッチクロック」検討で日本の野球はどうなる

 日本のプロ野球でも「被害者」が続出するかもしれない。

 NPB12球団オーナー会議が7月10日に都内で開かれ、メジャーリーグで導入している投球時間制限ルール「ピッチクロック」の導入を検討するよう、NPB事務局などに指示したと、議長を務めた西武ライオンズの後藤高志オーナーが明らかにした。
 
 今季よりMLBで導入され、しばしば批判の的となっている「ピッチクロック」が日本のプロ野球でも実施されれば、その影響は計り知れない。「次の1球がなかなか決まらない」というバッテリー間の緊迫のやりとりは激減するだろうし、攻撃側は1球ごとにサインを変える細かい采配ができにくくなる。日本のプロ野球の形が大きく変わるだろう。

 そもそも、ピッチクロックとは試合時間短縮を目的としてMLBが導入した新しいルール。投手はボールを捕ってから、ランナーがいない状況では15秒以内、ランナーがいる場面では20秒以内に投球動作に入らなければならない。打者は制限時間残り8秒より前に打席で準備を整えなければならず、「タイム」も1回のみに限られる。

 もし投手が違反した場合は1つの「ボール」が、打者が違反した場合は1つの「ストライク」が与えられる。ちなみに、エンゼルスの大谷翔平はピッチクロック違反の第1号選手となっている。

 では、NPBの試合がどれだけ長くなっているかというと、平均試合時間は3時間6分(7月10日現在、コールド・延長を除く)で、3時間を超える試合が当たり前となっている。たしかに長い。なお球団別では千葉ロッテが2時間59分で唯一の2時間台、最長は福岡ソフトバンクの3時間14分だ。

 試合が長くなる原因としては、「1球1球に要する投球の時間が長い」「球場内イベントが多くて長い」などの意見がみられる。最近では阪神タイガースの岡田彰布監督が横浜スタジアムでの球場内イベントに対し、冗談めかしながら「待ってる時間長いで」などと発言して話題になったばかりだ。

 だから、ピッチクロックが導入されれば試合時間は確実に短縮できるだろう。MLBではピッチクロックの導入によって、今季の平均試合時間が28分も短縮したという。

 とはいえ、である。「コリジョンルール」のように、これまでNPBはMLBのルール変更に追随する形で新ルールを導入してきた。今回は「極端なシフトの禁止」や「ベースの拡大」についても検討を進めることが決まったというが、なぜNPBはMLBの真似ばかりするのだろうか。国際試合を見据えて、ということもあるだろうが、NPBにはNPBのよさがあると思うのだが。

(小林英介)
記者・ライター。1996年北海道滝川市生まれ。業界紙記者として働きつつ、様々な媒体に寄稿している。阪神ファンであり、毎日お酒を飲むほどのお酒好き。「ビジネスジャーナル」「日経クロステック」などでも執筆。

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