東京電力福島第1原子力発電所の処理水放出を巡る問題で、国際原子力機関(IAEA)は4日、「国際的な安全基準と合致している」との報告書を発表した。
日本訪問を終えたグロッシIAEA事務局長は7日、韓国で朴振外相らと会談したが、翌8日にソウルで抗議デモが行われ、数百人が参加。グロッシ氏は9日にも、韓国最大野党「共に民主党」の国会議員と面会したが、議員らは「中立性を欠き日本に偏向した検証だ」「結論ありきの日本オーダーメード型調査だ」と批判を繰り返した。
「4月以来、民主党は李在明代表を中心に、処理水放出を『放射能テロ』『核廃水』と呼ぶなどして、地方組織を総動員し処理水放出反対運動を展開してきました。とはいえ、民主党の主張が科学的根拠に基づかず、いたずらに国民に恐怖を植え付けている印象は否めない。民主党としては 李代表自身の贈収賄事件や側近議員の暗号資産不正の問題などで支持率が大幅に低迷し、それをはぐらかすためにもこの海洋放出問題で政府を攻撃したい。しかし、IAEAから『国際的な安全基準に合致』との結論が出たことで思惑通りにいかず、相当イラついているようだ」(国際部記者)
実は、処理水放出を巡る野外集会や署名活動などが繰り返される中、韓国検察当局は、韓国の労働組合組織元幹部ら4人が海外で北朝鮮の工作員と接触、指令を受けたなどとして5月10日、国家保安法違反の罪で4人を起訴している。
「起訴された4人はいずれも全国民主労働組合総連盟(民主労総)や傘下組織の幹部を務めていた人物で、起訴状によれば、彼らは2017〜19年にカンボジアやベトナム、中国で北朝鮮の工作員と接触し、福島第1原発の処理水放出に合わせて『反日感情をあおれ』との指示を受けていたとされます。この情報を受けた国家情報院が警察と合同で1月にソウルにある民主労総本部を家宅捜索し、3月に4人を逮捕しています。これまでの捜査で、北朝鮮からの指令文90件と北朝鮮への報告文24件が押収されたそうです」(同)
検察によれば、北朝鮮は19年には、日本の対韓輸出規制強化を巡り、日本大使館周辺でのデモなどを「積極的に行う」よう指示。さらに21年には、原発処理水の放出問題で危機をあおり反日感情を拡大させ、日韓の対立を深めるよう「指令文」を送り、彼らに実行させたとされる。
「北朝鮮としては、日韓関係を分断・混乱させることで韓国を弱体化させ、朝鮮半島統一を実現するという狙いがあるのでしょうが、結果的に最大野党の共に民主党がその片棒を担ぐ格好になっています」(同)
なお、北朝鮮の当局者は今回のIAEAの報告について「想像するだけでおぞましい核汚染水の放出計画を積極的にかばい、助長している」と非難、相変わらず「我々の核開発を批判する一方で、日本の汚染水放出を擁護している」との筋の通らない主張を繰り返している。
(灯倫太郎)