ウクライナのゼレンスキー大統領が記者会見で、「反転攻勢と防衛行動がウクライナで起きている」と反攻開始を認めたのは10日のことだが、翌11日には3つの集落の奪還を発表。続く12日にもウクライナの国防次官が、東部ドネツク州ベリカノボシルカの南方にある集落ストロジェネを解放したとSNSに投稿。ウクライナ軍報道官も、露軍が全域制圧を宣言しているドネツク州バフムト周辺で最大700メートル前進したと伝え、ウクライナ軍の攻勢が俄然活気づいてきた。
ストロジェネは22年3月から1年以上露軍の占領下にあった地域だが、ここ数日におけるウクライナ軍の前進状況からみて、ウクライナが複数方面で自陣を奪還していることは間違いないようだ。
一方、ウクライナ側の反転攻勢を受け、プーチン大統領は12日、「ロシアの日」式典演説で「ロシアは困難な時にある」と認め、国民に結束を呼びかけたというのだが、実はこの発言に疑問を投げかける専門家は少なくないという。
「というのも、このところのプーチン氏は以前にも増して側にイエスマンしか置かなくなり、少しでも悪いニュースを伝えようものなら面罵し、左遷しているというのです。もちろんウクライナの反転攻勢が始まったことは報告されているでしょうが、どこまで劣勢を詳細に伝えられているのか……。つまり、プーチン氏がなにをもって『困難な時』と例えたのかに注目が集まっているというわけです」(ロシアウォッチャー)
かねてよりプーチン氏の側近たちは、ボスを怒らせるのが怖いため、本当の戦況を伝えていないという情報が流れていた。テレグラムチャンネル「VChK-OGPU」の6日付け投稿によると、《プーチンに悪いニュースを伝えた者は「西側のプロパガンダに毒されている」と叱責され、良いニュースを伝える者だけがプーチンに「常時面会」できる地位を維持している》と指摘。この投稿は、ウクライナの複数の報道機関でも報じられている。
「じつは昨年3月にもAP通信が、アメリカ情報機関の複数の関係者の談話として同様の内容を伝え、バイデン米大統領も『プーチンは引きこもり状態にあり、自身の顧問の一部を解任、あるいは自宅軟禁状態に置いているようだ』とコメントしています。プーチンはウクライナ侵攻を始める際『ウクライナ政府はネオナチ』と攻撃してきましたが、イエスマンに囲まれ悪い情報が遮断された今の状況は、彼が忌み嫌うヒトラーの末期と同じ。愛国主義を煽り、反対派を治安機関を使い弾圧してきた手法もそっくりです。今後さらに敗色濃厚になれば、一切聞く耳を持たなくなり正常な判断もできなくなる可能性がある。ベラルーシへの核配備を間近に控える中、この状況はかなり危険です」(同)
ヒトラーは、包囲されたベルリン市の総統地下壕内で自らの命を絶った。はたしてプーチンがたどる運命は……。
(灯倫太郎)