佐藤治彦「儲かるマネー駆け込み寺」値上げラッシュを「PB商品」で乗り切る

 桜も散って、そろそろ初夏って感じになってきましたね。皆さん、お仕事ご苦労様です。桜は散る、物価はジワリと、いや、どんと上がっているね。そして上がってほしい給料は大して上がらない。大企業は上がるみたいだけれど、日本の企業の99.7%は中小企業だからね。

 時折通う家の近くのやきとん屋も2割くらい価格が上がった。そこで頼む串の本数を少し減らし気味にしてたんだけど、やきとん屋のオヤジさんが大のギャンブル好きで「アサヒ芸能」を欠かさず買ってるってわかってね。「週刊誌はこれしか買わねえよ、俺は。ずーっとそうだ」って。それでこの前「あんた、書いてんだね」ってバレちゃってさ。元の本数に戻したよ。

 3月は原油価格が落ち着いて、電力会社の値上げは少しは抑えられたけれど、サウジアラビアとロシアが原油を減産すると発表して、また上がった。困ったもんだ。

 原油だけなく、4月は食品を中心に5100品目の値上げと、テレビや新聞で報道されていた。もちろん、値上げには違いないんだけれど、これはメーカーからの卸価格。我々消費者が店で買う価格とは違う。かつてはメーカーが標準小売価格を設定し、事実上の小売価格統制を行うこともあったけど、今は時代が違う。大手スーパーなどは、これじゃ売れないとなると、メーカーに交渉して価格を押し戻すこともある。

 消費者が受け入れられない値上げというのは、なかなかできないもの。いい例が某大手回転すしチェーンだ。去年の秋に値上げしたけど売り上げが3割も落ちてしまい、年が明けてから価格を下げたほど。企業が当初思ったような値上げはできていないのが現状なんです。

 家計を直撃する値上げ対策として私が注目するのは、大手スーパーの「PB(プライベートブランド)商品」の価格改定。食品から日用品まで、数多くの商品がスーパーやコンビニ側からの発注でメーカーに製造させて売っている商品だ。

 このPB商品、数年前に法律が変わり、食品などはどのメーカーが作ったのかを表記することになっている。商品の裏の表記を見ると驚く。誰もが知っているメーカーがズラリと並んでいるのだ。大手メーカーが名前を出して作っているので手抜きはない。包装などパッケージは違っても、中身はほぼ同じという商品ばかり。価格は大手メーカーの商品のバーゲン価格にほぼ近く、いわば底値価格に近いのだ。

 だから賢い消費者ほど、PB商品を生活に取り入れていて、大手メーカーの商品が安いかどうかの基準にもしている。この春はこのPB商品の価格もジワリと上がった。それも一挙に10〜20%値上げというものも少なくなかった。PB商品の価格が上がると、大手メーカーの商品の価格もそれ以下になることはほぼない。いわば、お買い得価格の基準を作るものが上がったのだ。

 イオン系のスーパーではPB商品の値上げの1週間ほど前に値上げ予告が出た。例えばコンソメ味のポテトチップスは「4月3日から58円から68円に値上げします」と告知されていた。おなじみ湖池屋が製造している商品なので、私はこればっかり買っていた。ちょうどカードを使えば5%引きの日だったので多めに買ったよ。

 値段はジワリと上がっても家計に優しいPB商品。皆さんも上手に取り入れて、値上げラッシュを乗り切ってもらいたい。

 でもさ、この記事を書いていたら、テレビで特派員がこう言っていた。「エジプトでは、物価高により最低賃金をこの春から一気に30%引き上げることになりました」って。

 こういうのを「異次元」の改革って言うんだよね。物価上昇は仕方がないとしても、給料もしっかり上がるようにしてもらいたいね。

佐藤治彦(さとう・はるひこ)経済評論家。テレビやラジオでコメンテーターとしても活躍中。著書「素人はボロ儲けを狙うのはおやめなさい 安心・安全・確実な投資の教科書」(扶桑社)ほか多数。

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