日本近海に大型の海洋生物が次々に目撃される現象が年明けから話題となった。その第1号が1月9日、大阪・淀川に突如現れた体調約16mのマッコウクジラ、通称「ヨドちゃん」である。日に日に衰弱していくヨドちゃんの様子は連日ワイドショーで生中継された(1月13日配信)。
大阪・淀川の河口付近で「迷いクジラ」と見られる巨大なマッコウクジラが発見されたのは1月9日のこと。SNSでは「淀ちゃん」の愛称が定着しつつあるが、エサ不足のためか、衰弱を不安視する声があがっていた。
そんな中で、1月12日放送の「ミヤネ屋」(読売テレビ)はトップでこの話題を取り上げ、「速報 迷いクジラ 動きなく衰弱か」とのテロップのもと、空中からライブでクジラの様子を伝えた。
中継リポーターは「昨日(11日)の夕方、尾びれを動かしたり、潮を吹いたりする様子が確認できなくなった」との海上保安監部の報告を伝え、「今朝も同じ状態が続いている」と説明。番組MCの宮根誠司は心配そうに「ほとんど移動はしていないんですか?」と尋ねると、リポーターはほとんど動いていないと答えた。
その後、東京海洋大学鯨類学研究所の中村玄助教授が電話出演。迷いクジラの状態について聞かれると、「呼吸していないということは、すでに死亡している可能性が非常に高いと思います」と回答。宮根は「はぁ〜」とため息をついて「エサなどもないですよね」と語ると、中村助教授は「ただ、死亡した要因がですね、エサが不足して死亡したのではないのではないかと私は考えています」と述べて、何かしらの病気、個体数を減らすための自然死である可能性について言及した。
その後も専門家は迷いクジラが死んでいることを前提で解説していたのだが、宮根は「これもう、自力で湾の外に出るのはなかなか難しいんですかね? 衰弱している状況で」と質問。中村助教授は「はい。もうこの状況で正直、見ていてぜんぜん動きがないので死亡しているんではないかと」とコメント。映像には湾に浮かぶ迷いクジラの姿が映し出されていたが潮を吹くのはおろか、ヒレを動かす様子も見られなかった。
中継の終わりに、宮根は「なんとか助けてあげたい」と悲壮感をにじませていたが、このチグハグなやりとりに視聴者からは《宮根さん先生の話を聞けよ。もう死んでるんだって》《死んでるのに自力で泳げないだろ》《助けてあげたいってもう助からないよ》といったコメントが見られた。13日午前、大阪市はクジラが死亡していることを確認した。
視聴者のフラストレーションをおさえるためにも、人の話はきちんと聞くべきかもしれない。