3月22日に国土交通省から全国の2万6000地点の地価調査が発表になりました。23年1月1日現在で22年に比べて1.6%のプラスと2年連続の上昇となりました。しかし、平均なんかはどうでもいいこと。自分が住んでいる場所、自分が住みたい場所の地価がどうなっているかが気になります。
コロナ禍からの回復で観光地、全国の物流拠点の地価が上がり、都市圏の周辺が人気だそうです。また、不動産価格はどうしても金利に影響されます。マイホームを購入する時は銀行などで住宅ローンなどを組む必要が出てくるからです。
住宅ローンは、借りた時の金利が返済期間すべてで適用される「固定金利」と、半年や3年といった期間が過ぎると、その時点での金利情勢で金利が見直される「変動金利」のものがあります。
現状の変動金利は年0.3%ほどのものもありますが、例えば35年の固定金利の場合だと約1.8%前後になります。金利が違うと買う時の不動産価格は同じでも、実際に支払うお金はグッと変わってきます。
もし、5000万円の住宅資金を30年ローンで借りたらどうなるでしょう。元利均等払い、諸経費などはなしで試算してみました。
金利が年0.3%となると、毎月の返済金額は14万5249円。総返済額は5229万円です。金利が年1.8%になると、毎月の返済額は17万9849円になり、総返済額は6475万円。なんと、1246万円も支払い金額が変わってしまうのです。
それでも、あえて金利の高い固定金利で住宅を買う人も少なくありません。変動金利では住宅ローンとしていったいいくらのお金を支払う必要があるかが決まらないからです。
もしも今の金利水準で、今後30年近く変わらないのであれば、変動金利で借りた方が得です。しかし、この1年の間にアメリカはベースとなる政策金利が9回も上がり、1年で5%近くも金利が跳ね上がった。日本でも1990年代は、住宅ローンの金利が年5%前後でした。もし急激な金利上昇があったら、変動金利でローンを組んでいる人の中には、返済ができなくなる人も出てくるでしょう。
過去30年近く日本の金利は下がったままでしたが、今までがそうだったのだから、これからもそうなるとはかぎりません。特に日銀総裁が植田和男さんに変わることは気になるところです。これから何十年も先の金利がどうなるのかなど、誰にもわかりません。ただ、変動金利だけでなく、固定金利も今の金利水準は最低圏だということは断言できます。
これから住宅を買われる方、もしくは、すでに住宅を買って住宅ローンを返済している人は、変動と固定どちらで借りるのが賢いのでしょうか? 私は、可能であれば、変動と固定と混ぜ合わせたローンを組むのが賢いと思っています。
固定と変動を半々で借りておけば、少なくとも当面の金利は固定ほど高くありません。半分は固定なので変動だけでローンを組む場合と比べれば、今後の金利の動向から受ける返済金額の影響も半分になります。
長期の住宅ローンを組む人も、その多くは途中で繰り上げ返済をして、少しでも早く借金を終わらせたいと頑張る人が大多数です。変動も固定も借りておけば、例えば、5年後に繰り上げ返済をしたいと思った時、変動金利は思ったほど上がらず、依然として当初組んだ固定金利の方が高いままとなれば、固定金利部分の住宅ローンを繰り上げ返済すればいい。もし、予想以上に市場の金利が高くなり、変動金利が固定金利の利率を上回るほどになっていれば、変動金利の住宅ローンに繰り上げ返済分を回せばいいのです。
将来の金利のことはわからないのだから、臨機応変に対応できる住宅ローンを組み合わせるのが賢いと思うのです。
佐藤治彦(さとう・はるひこ)経済評論家。テレビやラジオでコメンテーターとしても活躍中。著書「素人はボロ儲けを狙うのはおやめなさい 安心・安全・確実な投資の教科書」(扶桑社)ほか多数。