プーチン大統領の招きでロシアを公式訪問した中国の習近平国家主席。一方、習主席の訪露が明らかになった17日、国際刑事裁判所(ICC、本部オランダ・ハーグ)が突然、ウクライナからの子供の連れ去りに関与した疑いがあるとして、プーチン氏に対し逮捕状を出したことが波紋を広げている。
ロシアウォッチャーが語る。
「今回、国際刑事裁判所が提起した逮捕理由は、プーチンが占領地域から子供を拉致監禁するなどの戦争犯罪を行ったというものですが、ロシアはこれまでにドンバス地域やサポリージャ、ブチャなどで、老若男女問わずに極悪非道な行為を続けてきたことは周知の通り。ただ今回のポイントは子供に対する違法行為で、なぜなら相手が成人の場合は『武力反撃に対抗して』『正当防衛で攻撃を加えた』と言い逃れが出来ますが、子供にはそれが通用しない。つまり、国際刑事裁判所はそこを突いてきたわけです。子供は武装もしておらず、抵抗も不可能。さらにまだ自己決定する分別もありません。そんな子供たちがロシア軍により強制的に連れ去られ、その多くがロシア人との間で『縁組み』させられている。子供の保護は国際法で定められ、ロシアとて例外ではありません。今回の逮捕状は、そうしたプーチンの罪深さを改めて内外にアピールする意味合いもあったわけです」
つまり今回の逮捕状請求は、身柄引き渡しや本人出廷が目的ではなく、その裏には「外交の制約」があるというのだ。
「というのも、たとえばプーチンが日本を含むICCに加盟する123の国と地域を訪問すれば、やるやらないは別として法律の上では逮捕が可能になります。そうなれば、外交などの行動が大きく制限されることは避けられない。しかもICCは過去、現職国家元首に逮捕状を出したことはあるものの、国連安保理常任理事国の元首に逮捕状を出すなどというのはもちろん初めてのことで、このインパクトは大きい。今後、犯罪者のレッテルを貼られたプーチンとの会談を拒む国家首脳も現れるでしょう」(同)
その意味では、今回の習主席の訪問が“戦争犯罪人”となったプーチンにとって初の首脳会談となるわけだが、
「ロシアも中国もICCには非加盟なので、習近平のロシア訪問は何の障害もありません。会見で習氏は停戦に向けて建設的な役割を果たすとしていますが、水面下でプーチンが軍事的な協力を要請する可能性もあるでしょう。会談後の両首脳の発言が注目されます」(同)
習主席のロシア滞在は22日まで。会談の目的はさて…。
(灯倫太郎)