その巨人をしのぐ潤沢な資金を持つのがソフトバンクだ。プロ野球記者歴50年のベテランで、「夕刊フジ」編集委員の江尻良文氏が言う。
「ソフトバンクは球界にマネー革命をもたらしたと思います。孫オーナーは『野球で儲けようと思っていない』と、利益をそのままチームに還元するため、支配下選手の総年俸も球界一。所属の3年で結局一度しか登板のなかった松坂大輔(38)に毎年4億も5億も払える球団なんて他にありませんよ。私はインセンティブも含めれば、柳田悠岐(30)が球界最高年俸ではないかと思います。トータルで7億円超に設定されていても不思議ではない」
報じられている柳田の推定年俸は5億7000万円。今季は4月のシーズン初頭から左ひざ裏の肉離れで長期離脱中だ。
「出来高での上乗せは期待しづらいでしょうが、ソフトバンクはインセンティブの項目を厚くして、年俸実態をわからなくしていると聞きます。そのため一説では『柳田10億』という話まであるんです。他の選手も推定より高額の年俸をもらっているはずですよ」(スポーツ紙デスク)
事の真偽はさておいて、ここまで「最高年俸」のさまざまな情報が錯綜するのは、先に触れたように、日本球界では詳細な年俸の額を公開しないためだ。
「実際の金額がわかっていても、球団側から『低めに発表してほしい』とそれとなく要求されるケースもあります。たとえ数千万円でも、もらいすぎというイメージをつけたくないんですね」(球界関係者)
中には日本ハムの中田翔(30)のように、会見で金額を公開する選手もいる。しかし、それでも紙面に表記する時には「(推定)」とつけなければいけない不文律があるという。
「大半の選手は自分がいくら稼いでいるかバラされたくないし、球団の親会社としても、ある程度ブラックボックスになっている部門があったほうが、経営上都合がよかったりしますから。例えば阪神などは、親会社の阪急阪神HDにおいては『エンタテインメント・コミュニケーション事業』として他事業と一括され、個別の収支が明らかにはなっていません」(球界関係者)
この閉鎖的な状況に、江尻氏は、苦言を呈する。
「プロなんだから、年俸は自身の評価を示す指数として堂々と公開すればいい。球団も、金を出せるのは企業努力の結果なんだから、周りからとやかく言われる筋合いはないはずなんですけれどもね」
金満球団は嫌がりそうだが、派手な数字が並ぶ球界最高年俸が公開されたら実に夢があると思うのだが─。