売れない芸人は廃業?ロザン菅の「吉本芸人削減」提言に強い違和感

 闇営業問題に端を発した吉本興業批判は、止む気配を見せないようだ。7月22日には同社の岡本昭彦社長が記者会見を行い、“9対1”と揶揄される同社のギャラ配分について、平均値で5対5から6対4と説明。これに対して多くの所属芸人が反発し、なかには振込金額が1円と記載された書類を公開する者も現れた。

 このギャラ配分問題を巡って翌23日には、ロザンの菅広文がラジオ番組「ミント!」(MBSラジオ)で持論を披露。吉本は「お客さまファーストじゃないといけない」と指摘し、約6000人の芸人が所属している現状に対して「お客さまファーストで考えた時、本当に必要な6000人なのか?」と疑問を呈したのである。

 続けて菅は「お客さまが望んでいる芸人の人数に絞るべき」と訴えたが、芸能界のシステムに精通する芸能記者は、菅の発言に違和感を抱いたという。

「菅の発言は所属芸人の人数を絞ることで収益性を高め、芸人全員がお笑いで生活できるようにすべきとの提言と受け止められます。しかしこれは一見正論のように見えて、芸人を育てていくシステムを根底から覆す恐れのある望ましくないアイデアではないでしょうか」

 数あるお笑い系事務所のなかでも吉本の6000人という所属人数はたしかに異例だ。だが芸能界にはほかにも、同規模のタレントと契約している事務所があるという。

「美の総合商社ことオスカープロモーションは、やはり6000人の所属モデルを抱えています。しかしオスカーに対して《モデル全員が食えるようにすべき》とか、《所属人数を減らせ》といった声があがることはありません。なぜなら食えないモデルにはそれでもオスカーに所属し続けるメリットがあり、オスカー側にも多くのモデルを抱える旨味があることから、お互いにウィンウィンの関係になっているからです」(前出・芸能記者)

 吉本とオスカーは「仕事をしなければギャラは発生しない」という点で共通している。そしてオスカー所属モデルと言えども、読者モデルやエキストラといった仕事内容次第では、ほとんどギャラがもらえないケースも少なくないのだ。同様に吉本にもほとんどギャラをもらえていない芸人が多数存在するが、それは当人たちも納得済みではないのだろうか。前出の芸能記者が続ける。

「芸能事務所には二通りのアプローチがあります。ひとつは芸能人としての生活を保障するという前提で、所属タレントを厳選するスタイル。そしてもう一つは吉本やオスカーのように事務所入りのハードルは大きく下げ、多くのタレントに“芸人”や“モデル”を名乗るチャンスを与えつつ、売れないうちはギャラを最小限に抑えるケースです。この二つはどちらがいい悪いというものではなく、芸能志望者はどちらを選ぶことも可能。食えなくてもいいから吉本やオスカー所属の道を選ぶか、それとも食えないくらいならそもそも事務所入りを諦めるかという選択ですね。ここで吉本が菅の主張通りに所属芸人を絞るのであれば、数多くの“プロ芸人”たちが瞬く間に芸人を廃業するのは必至。それでも菅は《どうせ売れないのだから首になっても当然》というスタンスなのでしょうか?」

 菅は相方でクイズ芸人の宇治原史規ばかりが目立っているように見えるが、菅自身も著書の「京大芸人」と「京大少年」が合わせて20万部を超えるなど活躍。しかもコンビのギャラはすべて折半しており、生活に不安はない。そんな菅の発言は、食えない芸人たちにどう響いているのだろうか。

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