パチンコメーカーの西陣が3月1日に廃業を決め、約70年の歴史に幕を閉じた。1月21日に東京商工リサーチが示したデータでも、22年のパチンコホールの倒産は前年より2.1倍で、過去最高だったという。パチンコ・パチスロ市場はかつて30兆円産業とも言われたものだが、今や半分以下の14兆円に落ちている。パチンコ人口の縮小と、密で忌避されたコロナ禍の影響もあって、パチンコ・パチスロ産業が苦しんでいる。
そんな状況下でも、元気なパチンコ・パチスロ企業は非常に好調だ。
「最大手のセガサミーホールディングスは年初は2000円だった株価がおよそ2400円(3月3日時点、以下同)、円谷フィールズホールディングスなどは2500円が4200円に。メーカー以外でも遊戯場向けプリペイドカード販売のゲームカード・ジョイコホールディングスは半年で株価が約3倍になるなど、パチンコ・パチスロ関連銘柄の好調ぶりが目立ちます。株情報サイトでは、政治マターの防衛、原発や今後の成長産業であるAIや宇宙といった銘柄に並べて、23年推奨銘柄としてパチンコ・パチスロ関連銘柄を挙げているものもあります」(経済ジャーナリスト)
実際の業績を見ても、メーカー大手のセガサミーやSANKYO、周辺機器のゲームカード・ジョイコホールディングス、ダイコク電機などが相次いで業績の上方修正を見込んでいる。パチンコ・パチスロのマーケティングを行っているシーズ・リサーチによれば、22年の遊戯人口は837万人で、前年を24万人上回ったという。ということは、遊戯人口減も底を打つ一方、苦境に絶えられなかった企業は退場を強いられ、新陳代謝が1回りして落ち着いたのかもしれない。
だがパチンコ・パチスロが有望なのはそれだけではない。大きな追い風となりそうなのが、次世代パチンコ機のスマート・パチンコ、つまり「スマパチ」の投入だ。
「スマパチはパチンコ玉に触ることなくパチンコを打つ台です。密閉式の台の中で玉が巡り、出玉はホールから管理センターに送られて管理されます。だからいわゆるゴトなどの不正行為が出来なくなり、業界のイメージは向上。また台の維持管理の手間が大幅に省けるため、一説には新規出店コストが従来の20〜30分の1になるともされています」(同)
スマパチの導入が可能になったのは、ギャンブル依存症対策で18年に法改正がされたからだ。スロットのスマスロは昨年11月に導入されたが、スマパチは4月以降の導入とされている。
また警察庁は1月25日にパチンコ営業の広告・宣伝のルールを10年ぶりに変更するとした。これにより、今までは禁じられていた広告・宣伝の一部が解禁されて緩やかになる。
しばらく暗い話ばかりだった業界に、23年は新風が吹くか。
(猫間滋)