台湾国防部が危機感、中国の「ウクライナ和平案」に隠された計略とは?

 ロシアとウクライナとの休戦と直接交渉再開実現のため24日、「ウクライナ危機の政治的解決」に向けた12項目の「方針説明書」を発表した中国習近平政権。

 内容は「全ての国の主権尊重」「冷戦思考の破棄」「敵対行為の中断」「平和に向けた対話の再開」等々、どれをとっても実現すれば和平への道が開かれそうなものばかりだが、この戦争が開戦から1年という歳月が経過したこと、さらに中国が仲介役に積極姿勢をみせ始めたことに危機感を募らせているのが、“第二のウクライナ”とも言われる台湾だ。

「実は24日、台湾の邱国正・国防相が記者会見を開き、『ロシアによるウクライナ侵攻は中国の大きな教訓となった。中国軍はスピードを重視するだろう』と有事のリスクを改めて強調しました。というのも、当初『48時間以内にキーウを陥落できる』と踏んでいたプーチン大統領の予想は大外れし、結果1年が過ぎても戦争は終結せず、逆にロシア側が苦戦を強いられる状況にもなりました。当然、中国としては同じ轍を踏まないために、台湾侵攻となれば素早い攻撃を仕掛けくるはず。そのため、台湾海峡で連日軍事訓練を行っているのです。ウクライナでの戦争が2年目に突入したことで、『和平案』を足掛かりに台湾統一を図りたい習近平政権に、台湾政府は危機感を募らせています」(全国紙記者)

 台湾メディアの中には、習近平政権が今回発布した「和平論」の狙いは、来年の台湾総統選で親中の国民党を勝利させ、自身の任期中に「平和統一」を達成することにある、との報道もあるが、

「実際問題として台湾と事を構えるとなると、その後ろにはアメリカがいるため長期戦は否めない。ならば、来年1月の台湾総統選で親中の国民党に勝利してもらって、政治的に『平和統一』を目指すのが理想的。そのためにも、ロシアとウクライナに『和平』を持ち掛け、『中国は平和を望んでいる』というアピールを台湾の無党派層にしておきたいところ。そんな習近平氏の狙いが見て取れます」(同)

 23日付のウォール・ストリート・ジャーナルによれば、台湾と中国との軍事的緊張を受け、米国が台湾への派兵を現在の4倍以上に増員することを決定したという。

「台湾問題を解決し、祖国を完全に統一することは変わらぬ歴史的任務」と言ってはばからない習近平氏の台湾に対する政治的、軍事的圧力は今後さらに強まりそうだ。

(灯倫太郎)

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