ダルビッシュが強化合宿で侍ジャパン投手に伝授した「魔球」

 侍ジャパンの強化合宿が始まって2日目の2月18日、ダルビッシュ有がブルペン入りした。35球、捕手後方にはメディアだけではなく、他投手たちも集まっていた。その一挙手一投足を見逃すまいと、千葉ロッテ・佐々木朗希などはスマホで撮影もしていた。

「ダルビッシュは1球ごとにタブレットを覗き込んでいましたね。『自身の感覚と数値が一致しているか確認したい』と言っていました。全部で35球を投げましたが、うち25球は変化球でした」(球界関係者)

 その25球の変化球のなかで、侍ジャパンの投手たちが興味津々だったのが「スライダー」。ダルビッシュは3種類のスライダーを投げ分けているが、そのうちの一つはMLB移籍後に“編み出したもの”だという。

「軌道が独特なんです。日本ハム時代にバッテリーを組み、今回、ブルペン捕手として侍ジャパンのスタッフ入りをした鶴岡慎也氏も驚いていました」(同前)

 鶴岡氏の言葉を借りると、「いったん浮き上がってから曲がるような軌道」とのこと。

 侍ジャパン投手陣はその「浮き上がってから曲がるスライダー」に強く興味を引かれたようだが、ダルビッシュの凄いところはその“魔球”の握り方、投げ方を惜しみなく教えていることだ。ボールをリリースする前の手首の動かし方にコツがあるそうだが、すぐに習得できるものではない。しかし、侍ジャパンに参加した投手がペナントレースでこの魔球を披露する機会も近いのではないだろうか。

「2009年のWBC大会を知る古参のスタッフによれば、ダルビッシュの投球フォームは当時よりもコンパクトになったとも話していました。年齢や体のこと、MLBでの環境に応じて変えてきたのだと思います」(同前)

 技術面だけではなく、現状に満足しない探求心も学んでほしいものだ。

「若い選手に対し、ダルビッシュのほうから話し掛けている印象も受けました」(スポーツ紙記者)

 栗山英樹監督は昨秋の強化試合で各選手にヒアリングし、あえてリーダーを任命しないチームとする方針を決めていた。しかし、若い選手たちに自ら声をかけ、アドバイスを送り、自らのプレーで周囲を惹きつけて止まないダルビッシュの様子を見ていると、リーダーが“自然発生”したとも言える。

 2023年の侍ジャパンは、ダルビッシュのチームと言えそうだ。

(飯山満/スポーツライター)

スポーツ