やはり「ヨドバシカメラは駄目」ということなのか。
セブン&アイ・ホールディングス傘下のそごう・西武が、米投資ファンドのフォートレス・インベストメント・グループに売却される話のことだ。当初予定は2月1日だったが、直前の1月24日になって急遽、3月中に延期すると発表された。
この直前の23日、「そごう千葉店」がある千葉市の神谷俊一市長がそごう・西武に対し、そごう売却後も市との「連携継続」を望むという要望書を提出していたからだ。当然、思い出されるのは、西武の本拠地、池袋の高野之夫・豊島区長とそごう・西武(正確にはフォートレス側と言うべきかもしれない)との対立関係だ。
「高野区長が宣戦布告の狼煙を上げたのが12月14日のことです。会見の場で、『私に言わせれば〝しかけてきた〟』との不穏な言葉を発したので現場の空気は凍り付きました。フォートレスはそごう・西武の買い取り事業にヨドバシカメラのヨドバシホールディングスをビジネスパートナーとしています。すると当然、西武にはヨドバシカメラが出店することになるわけですが、高野区長は直接的な表現は避けつつも、西武デパートの低層階にヨドバシカメラが出店したのでは池袋の『文化』が損なわれると、強硬な反対姿勢を示したのです」(経済ジャーナリスト)
その時にネットやSNSで上がったのが、池袋にはヤマダ電機の日本総本店やビックカメラがあるにも関わらず、ヨドバシの進出には反対ということで、「なんでヨドバシは駄目なの?」という声だった。だから当然、今回も同じ疑問がわく。今回の要望書の中身も、そごう千葉店は「千葉市の顔」であって、店舗玄関口と周辺の街並みでの「現状維持」を求めるというものなので、高野区長のような厳しい表現はなくとも、言わんとするところは一緒だ。要は、あまり家電量販店に出張って欲しくはないとのものだ。
ヨドバシ進出に懸念を示す池袋と千葉市で微妙に事情は異なるが、問題視されるポイントは一致している。ロケーションの問題と、家電量販店の過度な「出店競争」を心配してのものだ。
「池袋の場合、ヤマダ電機とビックカメラは駅の北東のわずかに離れた一角にちょっとした電気街を形成するように出店しています。一方、西武デパートは駅の南側に直結した側に位置しますし、何といっても西武は池袋の顔です。そして千葉市の場合、まず駅に隣接する形でそごうがあって、そのすぐ隣に並んだような形で長年、ヨドバシカメラが営業していました。ところが昨年11月にビックカメラがヨドバシカメラと駅との導線上に割って入る形で大型店舗を出店、既に家電競争が始まっていたのです。そのうえにヨドバシカメラがそごうに大々的に出店をすれば、駅の目の前はヨドバシとビックが並び立つ景観に変わってしまい、過当競争が激化すれば共倒れともなりかねません」(同)
だから千葉市長としてみればいくら民間の活動とはいえ、そんな状況を避けたいのは当然だ。池袋でも「(池袋が)秋葉原みたいになってしまう」というヨドバシの出店を心配する地元の声があったが、千葉市でも「変わらないで」との声がある。
だからヨドバシだから嫌われているというわけではないのだが、家電量販店が百貨店を食うことへの社会的拒否反応のようなものが垣間見える話でもあるのだろう。
(猫間滋)