「アルペン」が新宿LABI跡地に巨大店で攻勢!「ゼビオ」との2大勢力図の行方

 ヤマダ電機が新宿東口の「LABI 新宿東口館」を閉じたのは20年10月のこと。新宿と言えばヨドバシカメラの本拠地だったが、そこへ10年にヤマダが殴り込みをかけた。だが吸収した大塚家具の新宿ショールームとのカニバリ(共食い)を避けるためという理由で店を閉じることに。巨大なオーロラビジョンはドラマや映画のシーンに使われるなど、新宿を象徴する1つのランドマークだった。

 そして今度はその跡地にスポーツ用品販売大手のアルペンが進出するという。1月11日に発表された。今春オープン予定で、全10フロアで述べ床面積1万2000平方メートルはもちろんアルペンの新たな旗艦店となる。

「スポーツ用品販売業界では、グループ売上高の首位がアルペンの2332億円で、2位がゼビオの2024億円。3位のヒマラヤになるとぐっと落ちて577億円になるので、アルペンとゼビオの業界2強が鎬を削る形となっています。そのアルペンが新宿で大型出店というのですから、相当思い切った攻めの姿勢に出たということでしょう。しかもこの業界は郊外店が主流ですから、都市部に進出するということは、新たな競争の火ぶたが切って落とされたということなのかもしれません」(経済ジャーナリスト)

 こうした大胆な攻勢に出ることができるのも、コロナ禍で類似のアパレルが大打撃を食らった一方、“密”にならないレジャーとしてのゴルフとアウトドアが伸びたから。しかもこれで新たなファンをつかんだことになるので、今後は固定客として順調な成長が見込めると読んでのことだろう。

 とはいえ、数字を見れば事はそう単純には図れない。決算時期が異なるので単純な比較はできないが、アルペンが昨年11月に発表した22年6月期第1四半期決算(21年7〜9月)は売上高が前年同期比で9.5%マイナスの一方、ほぼ同じタイミングの11月12日にゼビオが発表した22年3月期第2四半期決算は同17.8%の大幅プラスでゼビオに軍配が上がっている。

「アルペンは売り上げが横ばいにもかかわらず、昨年7月に全従業員に総額7億円の一時金を支給するとして話題になりました。ただ同社では19年に大規模な高齢社員の早期希望退職を行った経緯があり、組織として合理化が済んでいます。そこで一転、攻勢に転じて2位を一気に引き離そうとの算段なのかもしれません」(同)

 ヤマダはLABIの撤退の理由に大塚家具とのカニバリを上げていたが、LABI進出の2年後にビッグカメラが近隣に出店した「ビックロ」は明らかに人の移動での動線が良いうえに、ユニクロとのコラボでのシナジーが効いている印象で、消費者目線の実感としてヤマダ撤退理由には違和感があった。この場所が、悪いジンクスとならなければいいのだが。

(猫間滋)

ビジネス