テレビ局はもはや泥船か…看板アナや有能スタッフの「離脱」相次ぐ

 特に若者の間で「テレビ離れ」が加速、テレビの斜陽化が言われだして久しいが、泥船から逃げ出せということなのか、有名なテレビ人の離脱が相次いでいる。

「1月10日、昨年12月にTBSを退社していた国山ハセン元アナウンサーがビジネス映像メディア会社に参画、映像プロデューサーに転身することをツイッターで発表しました。その直前には、テレビ朝日で『あいつ今何してる?』や『あざとくて何が悪いの』などの人気バラエティー番組を手掛けた芦田太郎プロデューサーが、米アマゾン系のコンテンツ制作会社への転職を公表して話題になったばかりです」(週刊誌記者)

 局アナの例では、テレビ朝日の富川悠太・元アナがトヨタ自動車広報部に、日テレの桝太一・元アナが研究者へ転身したことが記憶に新しい。その他、制作サイドではテレビ東京で「ゴッドタン」や「あちこちオードリー〜春日の店開いてますよ?〜」といった人気バラエティーを手掛けた佐久間宣行プロデューサーが21年にフリーランスとして独立、従来のテレビの枠を越えて活躍している。

 キー局の放送収入は減少傾向にあって、電通が毎年発表している「日本の広告費」では、すでに21年にインターネット広告費が2兆7052億円(対前年比121.4%増)に上り、マスコミ4媒体(テレビ・新聞・ラジオ・雑誌)の2兆4538億円(同108.9%増)を上回っている。

 明らかにネット媒体の勢いには敵わないが、キー局社員の平均給与ともなれば軽く1千数百万円を超える。それでもやはりテレビに残るのはリスクが高いということか。

「フジテレビは21年末に、満50歳以上・勤続10年以上の社員を対象に早期希望退職者の募集を行い、100名ほどがこれに応じました。中には佐藤里佳アナや境鶴丸アナといった同局の顔とも言えるアナウンサーも含まれていました。単純計算で1人1億円とも1億5000万円とも言われる特別加算金を支払ってのリストラですが、放送収入が減る中、それだけの大枚をはたいてでも社員の年齢構成比を変える必要があったということです」(経済ジャーナリスト)

 テレビからは〝人〟だけでなく〝コンテンツ〟も流出している。昨年のサッカーW杯はそんなテレビの弱体化を印象付ける大会でもあった。

「カタール大会での日本向け放映権料350億円のうち、ABEMAが200億円ほどと見られる巨額投資を行って全64試合を放映しました。残りはNHKが150億円、テレビ朝日とフジテレビが60億円と見られる金額で部分放映した一方、日本テレビとTBSは完全撤退。テレビ東京はニュース映像で動画を使えないほどでした。今回大会はテレビでのスポーツ中継の視聴のあり方を完全に変えた大会と言えるでしょう」(同)

 そもそもそのW杯本大会に至るまでの予選では、日本代表の試合はスポーツ配信チャンネルのDAZNに押さえられて地上波では見られなかった。野球にしたところで、巨人の試合は以前ならほぼ全試合を日テレで見られたものだが、今や東京ドームの20試程度だ。

 かつては「テレビで見られた」ものがどんどん姿を消している。さて次は何か。

(猫間滋)

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