今やすっかり私たちの生活に浸透しているキャッシュレス決済。22年6月に経済産業省が発表したデータによると、個人が購入したモノやサービスに占める同決済の割合は21年時点で32.5%。11年からの約10年間で2.3倍と急増しており、なかでも最近もっとも伸びているのが「QRコード決済」だ。
18年にはわずか0.05%だったが、21年には1.8%となんと36倍に。同年のクレジットカード決済率の27.7%には及ばないものの、デビットカード(0.92%)をすでに抜き、電子マネー(2.0%)にも肉薄。しかし、ここに来て飲食店を中心にQRコード決済の利用を停止する店が増えているという。
昨年末には〝古本とカレーの街〟として知られる東京・神保町にある老舗カレー店「ボンディ神田小川町店」が22年末でQRコード決済を終了。「第1回神田カレーグランプリ」で優勝し、ヱスビー食品との共同開発でレトルトカレーを商品化した都内の人気カレー店のまさかの発表を「東京中日スポーツ」など複数のメディアが報じている。
同店は公式ツイッターで「利用が増えるにつれ、毎月支払う手数料がすごい金額になってきました」と投稿したが、実際に多くのお店にとって決済手数料はかなりの負担だ。例えば、「楽天ペイ」は3.24%、「au PAY」やメルカリ提供の「メルペイ」、NTTドコモの「d払い」は2.6%、「LINE Pay」は1.98%、「PayPay」は1.6%か1.98%(※契約内容による)と一見少ないように思えるが、利用者が増えるとバカにならない額になる。
「飲食店におけるQRコード決済使用率は経済産業省の統計よりも大幅に高いのが現状です。仮に1食1000円なら10数円〜30数円は手数料として取られ、食材や電気・ガス代の値上げで苦しむ店側には捻出できる余裕はもはやありません。今回は有名店ゆえにニュースとして報じられましたが、同じように決済を取りやめる飲食店はあります。そのため、右肩上がりだった利用店舗数が鈍化に転じることも懸念されています」(飲食業界誌編集者)
お客にとっては便利なQRコード決済だが、店側にとっては一概にそういうわけでもないようだ。