高橋英樹主演のドラマ「西村京太郎トラベルミステリー 十津川警部」(テレビ朝日系)の最終回が12月29日に放送される。20年以上も続いてきた名シリーズが終わるとあって、早くも注目を集めている。
同シリーズは鉄道路線が舞台になるが、今回は静岡県の大井川鐵道井川線。一般的な知名度は低いが、鉄道ファンの人気は高いと鉄道ライターは言う。
「大井川鐵道は大井川本線と井川線があり、SL列車が走る本線がよく知られています。それに比べると井川線はあまり知られていません。千頭駅と井川駅の間を結ぶ路線で、旅客目的ではなくダム建設のために作られました。山岳地帯の急勾配を行くために『アプト式』と呼ばれる特別な方式を採用しています」
アプト式はラックと呼ばれる歯のついたレールに、車両下部にある歯車をかみあわせて登っていく方式の1つ。日本でこの方式を採用しているのは、今では井川線だけ。専用の車両は車両幅が小さく、おもちゃのよう。そんなところが鉄道ファンを魅了している。
十津川警部最終回では、井川線の沿線や井川駅、奥大井湖上駅が登場するようだ。
「奥大井湖上駅は人気の駅なので知っている人もいるかもしません。ダム湖に突き出した小さな島の先にある駅で、周囲に何もない秘境駅です。近くの山を30分ほど登ると、駅とダム湖を一望することができ、ここから撮る写真は有名。『奥大井恋錠駅』の愛称があり、ホームに『愛の鍵箱』が設置されていて、錠前をかけて愛を誓う恋人が多く訪れます。最終回では十津川警部がここで行われた結婚式に参加するシーンがあります」(前出・鉄道ライター)
本線を含めて大井川鐵道は移動の手段というより、観光路線としての意味合いが強い。そんな大井川鐵道を今年9月、災害が襲った。台風15号によって線路の流失や土砂の流入があり、本線と井川線が全線にわたって不通になった。
井川線はすでに復旧。そして12月16日には本線の金谷駅と家山駅の間で運転を再開した。同時にSL列車の「SL急行かわね路号」も運転を再開。多くの観光客が訪れている。
「SL列車は古い旧型客車で運行します。車内の雰囲気は素晴らしく、蒸気機関車の全盛期を思わせます。また、家山駅に蒸気機関車の向きを変える転車台がないので、新金谷行きの上り列車は機関車の後ろ側を先頭にしてバック運転を行います。これが見られるのは今だけ。乗りに行ってみてはいかがでしょうか」(前出・鉄道ライター)
さらに鉄道ライターからおすすめポイントがもう1つ。
「大井川鐵道は車窓からの景色がよく、SLが走っていることもあって多くの映画やドラマのロケ地になりました。特に有名なのは77年に公開された映画『悪魔の手毬唄』。若山富三郎演じる磯川警部が、石坂浩二が演じる金田一耕助を見送る有名なラストシーンは家山駅で撮影されました。今も当時の雰囲気を残しているので、ファンにはたまらないと思います」
西村京太郎トラベルミステリーの最終回を観れば、きっと大井川鐵道に行きたくなることだろう。