ロシアのプーチン大統領が、毎年行ってきた年末の恒例行事である「大記者会見」の中止を発表したのは12日のこと。大記者会見とは毎年12月、プーチン氏がモスクワに海外メディアやロシアの地方メディアを招き、数百から1000人を超える報道陣を相手に数時間にわたって質疑応答するという「名物行事」である。
「ウクライナ侵攻で苦戦を強いられる中、さまざまな恒例行事が中止になってきたものの、さすがに『大記者会見』中止は国内でも衝撃が大きかった。とはいえ、現在の状況を打開できる見通しが立たない中、苦しい立場に置かれるプーチンとしては、数時間にわたって質問を受け続けるこの行事はいかにも立場が悪い。戦況が好転せず、しかも大量動員した若い兵士の命が失われる現状に、公の場で説明することを避けたと見られています。他方では、重要イベントを中止して口を閉ざすことで、国内のプーチン離れは加速しかねない。つまり、自分で自分の首を絞めているとも見ることができます」(全国紙記者)
こちらも毎年恒例なのだが、プーチン大統領は国民の質問に答える「直接対話」イベントも6月に延期しており、このまま中止される公算が大きい。それどころか、大統領にとって最も重要な、上下両議員に内政・外交の基本方針を示す「年次教書演説」さえも、年内の実施が見送られる可能性もあるという。
「プーチンが最後に姿を見せたのは9日、キルギスタンで開かれたユーラシア経済共同体(EAEC)行事で、以来1週間以上公の場に姿を見せていません。相次ぐ公式行事取りやめの報に健康不安説や、さらにはウクライナ戦争敗北に備えて、南米への逃避説まで出ていますからね。前者はともかく、後者についてはいささか突飛ではあるものの、裏を返せばそんな噂が囁かれるほど現状が逼迫しているということです」(同)
その「南米逃避説」については、英紙タイムズが16日、ロシア大統領府消息筋の談話として伝えたもの。プーチン氏が今回の戦争で敗北した場合、ロシアから脱出しアルゼンチンやベネズエラなど南米の国に逃げ込む計画を準備する可能性があり、その作戦名は「ノアの方舟」と名付けられているというのだ。
「信憑性のほどはわかりませんが、ただ、プーチンにはかねてから健康不安説が囁かれていて、11月初めにはイギリスメディアが、プーチンが初期のパーキンソン病とすい臓がんを患っているとする電子メールを入手したと報道。ロシアの独立系メディア『ザ・プロジェクト』も、プーチンがこの4年間にがん専門医の診療を35回受けたと伝えています。劣勢に次ぐ劣勢で、気力と体力が衰え病状も悪化すれば、逃亡というシナリオも絶対にないとは言えない。恒例行事の相次ぐ中止がそんな憶測に輪をかけているようです」(同)
今月5日には、クリミア大橋を自らハンドルを握るドイツ車「ベンツ」で渡り、国民の不評を買ったとも言われる。その後にアップされたツイッターの動画には酒に酔ったような様子もあり、波紋が広がっている。
追い詰められた大統領が「方舟」に乗ることはあるのだろうか。
(灯倫太郎)