ウクライナでの劣勢が伝えられて久しいロシアだが、モスクワの南南西にあるオリョール市の立法議会に、想像を絶する「攻撃計画」が提案されたという。12月5日に英デイリー・スターや、米ニューズウィークなどが伝え、衝撃が走っている。
「報道によれば、提案者は共産党議員のビクトル・マカロフという人物で、同氏はなんと、ウクライナの戦車に対する『武器』として、野良犬を使うことを議会に申請したのです。野良犬を捕獲し、訓練し、体に爆弾を縛り付けて戦車に体当たりさせるという『自爆テロ部隊』として使用する計画です」(全国紙記者)
地方紙オレル・タイムズによると、かねてからこの地方では野犬の急増が深刻な問題となっており、同氏は以前にも、中国には犬食の需要があるとして、野良犬を中国に送ることを提案し、市議会で真面目に議論されたことがあったという。
実は、第二次世界大戦の独ソ戦序盤の1940年代、ソ連には、「対戦車犬」を育成したという歴史的事実がある。実際、それが侵攻するドイツ軍にとって大きな脅威になったのだ。
「対戦車犬は、長いレバーが標的に触れると爆発する仕組みの爆発物を体に据えつけられ、敵の戦車の下に潜り込むよう訓練されました。調教師たちは犬に何日も餌を与えず、練習用の戦車の下に肉片を置き、戦車の下に食べ物があると犬に思い込ませることで、『自爆犬』に育てていったといわれます。結果、機関銃の位置が高いドイツ軍戦車は、低い位置から走り込んでくる『自爆犬』を狙えず、さらに、ソビエト歩兵部隊の援護射撃もあり、戦車から出て小銃で犬を撃つこともできず、1942年7月のアゾフ海沿岸の街、タガンログ近郊での大規模戦闘では、56匹の犬が多くの戦車を破壊し、ドイツ軍を撤退させたという記録も残されています」
ソ連では当時、1000頭とも2000頭ともいわれる「自爆犬」が養成されたという。それから80年。現代に復活した「自爆犬法案」はどうなったのか。
「提案に対し議会では、『犬がロシアの軍人を噛む心配はないか』『犬を訓練している間のエサ代はどうする』等々の議論の末、法案は破棄されたようです。当然と言えば当然ですが、戦術的にも、動物愛護の観点から見ても、時代錯誤もはなはだしい提案だったと言わざるを得ないでしょうね」(前出・全国紙記者)
ニューズウィークは、「こんな提案が真面目に審議されるのは、ロシアがいよいよ追い詰められている証拠」と伝えているが、まさにその通りなのかもしれない。
(灯倫太郎)