中国国営中央テレビ(CCTV)がサッカーW杯カタール大会の中継で、マスクなしで観戦する観客の姿を意図的にカットして放送していると、海外メディアが報じた。ゼロコロナ政策に不満を抱く国民を刺激しないためと見られているが、中国のネット上では怒りの声が相次いでいるという。
「英紙『ザ・サン』によると、11月27日にCCTVで放送された日本対コスタリカ戦で、ノーマスクで観戦するサポーターたちの姿は大会関係者やスタジアムの画像に差し替えられていたといいます。他にもアメリカ対ウェールズ戦では客席にぼかしが入れられるなど不自然な編集が施されていたというのです。これに同紙は『中国国内でロックダウン(都市封鎖)への怒りが高まる中でマスクなしの顔を隠すため映像に手を加えた』と指摘しています」(フリーライター)
他にも英紙「デイリー・メイル」や米紙「ニューヨーク・ポスト」なども中国がマスクをしていない観客たちの映像を編集したとの記事を掲載している。
世界の多くの国が行動規制緩和やマスクの着用義務を廃止するなど、ウィズコロナの方向へ向かう中、中国だけは頑なにゼロコロナ政策を続けている。いまだに全土の計約2万カ所がロックダウンされるなか、各地に規制緩和を訴えるデモが広がっている。
「そんな中で、びっちりと埋まったスタンドでマスクなしで熱狂する観客の姿はさすがに見せられないと中国政府は判断したのでしょう。しかし、いくら検閲しても中国版SNS『微博(ウェイボー)』や『TikTok』には海外のユーザーが投稿したW杯の真実が数多く出回り、これを見た中国のネットユーザーからは《これは私たちが住んでいるのと本当に同じ世界でおこなわれているのか》《誰もマスクをしていないし、誰もコロナを恐れていない。なぜ、私たちだけ閉鎖された場所で生活しなければならないんだ!》《やはり我が国のゼロコロナ政策は間違っていたのだ》など怒りの声が相次いでいるのです」(中国事情に詳しいジャーナリスト)
デモでは「習近平は退陣せよ」などと、言論統制が敷かれる中国では異例の抗議が巻き起こっている。ゼロコロナ政策は来年春頃まで続けられると見られているが、このままではさらに国民の不満が爆発しそうだ。
(小林洋三)