「バンクシーらしくない」ウクライナの壁画に日本の“完売画家”が鋭い指摘

《私たちはダビデより強く、彼らはゴリアテより弱い。おそらくバンクシー》

 ウクライナの国防省公式Twitterが11月12日にメッセージとともにアップしたのは1枚の壁画。そこには小さな男の子が柔道着姿の大柄な男性を投げ飛ばしている姿が、バンクシー風のグラフィティアートとして描かれていた。バンクシーの公式インスタグラムには、他の壁画がアップされていることから、この壁画もバンクシー作品ではないかと指摘されている。

 11月15日放送のTOKYO MX「バラいろダンディ」に出演した画家の中島健太氏が、この壁画について持論を述べた。中島氏といえば、これまで700点以上の作品を完売させた“完売画家”として知られ、女優・佐々木希を描いた肖像画がネット上で話題になったばかりだ。
 
「本当にバンクシーなのか」

 番組でこう問題提起した中島氏は、この日の朝に描いたという、番組MC・ふかわりょうの肖像画を公開。バンクシーの技法を取り入れて制作したという作品は、まさにバンクシーのタッチそのもので、ステンシルシートとスプレーがあれば誰でも描けると説明した。

 現時点でバンクシーのインスタグラムには、倒立する体操選手を描いた作品3点がアップされ、バンクシーがウクライナに赴いて壁画を描いたというヒロイックなエピソードとして報じられている。だが、中島氏によれば、データだけ送ってステンシルを切り抜く作業やスプレーで仕上げる行程はバンクシーでなくてもできるという。

 さらに中島氏は、今回のバンクシー作品について「らしくない」と指摘。「バンクシーって問題提起、問題を可視化するのがすごく上手なアーティスト」としたうえで、プーチンらしき男性を男の子が投げ飛ばしている作品には、「あからさまにロシアが悪くてヨーロッパ悪くない。ウクライナがんばれっていう絵じゃないですか。そういうこと、一番しないアーティストだったんですよ。ロシアも悪いけど、NATOも悪いよねっていうようなのがバンクシーの反体制的な姿勢だった」と語り、「なんでこんなに安直に善悪の二項対立みたいなものをわざわざウクライナ行って…」と疑問を投げかけた。

 さらに90年代から活動しているバンクシーについて「30年間ずっと覆面アーティスト。これどっかで入れ替わってても、もしかしたら…。本当に今やってるのバンクシーですか」と問題提起した。
 
「バンクシーの話題では、2019年に東京都内で見つかったバンクシー風のネズミの壁画について言及。小池百合子知事が壁画に飛びつき、一般公開したことについて、世界的なアーティストなら法令違反もお咎めなしという前例を作ってしまったことを厳しく非難していました。美術の話だけでなく、政治の話題でもズバズバ本音で切り込む中島さんのコメントは視聴者にも好評で、民放のワイドショーからオファーが殺到しそうですね」(芸能記者)

 バンクシー作品がウクライナに出現したことで、小池都知事にまで飛び火してしまったようだ。

*写真はウクライナ国防省のTwitterより

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