平幕の人気力士といえば、西の前頭14枚目の炎鵬も見逃せない。令和元年五月場所の幕内力士の平均体重が163.9キロ。平成元年五月場所が146.68キロだったことからも、いかに大型化が進んだかがわかる。そんな中で、体重99キロの炎鵬の戦いぶりは常に注目の的だ。荒井氏によれば、
「現役時代96.5キロだった舞の海さん(平成三年九月場所で新入幕)とよく比較されますが、当時の幕内力士の平均体重は今よりおよそ15キロ少なかったので、肉体的なハンデはそれ以上でしょう。舞の海さんは猫だましなど立ち合いの奇襲も少なくありませんでしたが、炎鵬はしっかりと相手に当たってから流れを作り、動きの中で勝つ相撲を取るので肉体的な負担も大きいかもしれません」
師匠の宮城野親方も「小兵力士は相手に密着するタイプが多い中、炎鵬は動いて横から崩す相撲」と評し、「絶対に止まってはダメ」と指導を徹底しているという。
相撲担当記者によると、
「まさしくニュータイプの力士ですね。舞の海さんも『彼のほうが正攻法』と高く評価し、この先は『切り返しを覚えたほうがいい』とアドバイスを送っている」
さらに「ひねり王子」と命名した部屋の大先輩・白鵬からは五月場所前に「体重を110キロに」と指令が下っていたように、
「もっと体重を増やしたほうがいい。白米が苦手だそうですが、好き嫌いを克服してもっと太ること」
と、荒井氏も指摘する。
炎鵬自身も自覚してはいるものの、好き嫌いの多さが悩みの種だ。
「熱いものや辛いものが苦手で、稽古後のチャンコ鍋をパスして冷やしうどんを食べたり、カレーも甘口。『味覚が子供なんですよ』なんて話している(笑)。食材にしても、きのこ類や豆類全般がNGで、野菜ならピーマンはいいけど、ニンジンがダメ。甘いものでもクレープは好きだが、あんこが食べられない」(相撲担当記者)
五月場所では7勝2敗からズルズルと連敗を喫して負け越しただけに、暑さで食が細りがちな名古屋場所こそ体重アップが勝ち越しのポイントになりそうだ。
「注目の一戦は、204キロの巨漢・魁聖戦でしょう。西前頭15枚目とはいえ、春場所は前頭筆頭の実力者。体重差100キロ超のハンデ戦で、腰の重い魁聖を投げることは難しくても、サイドから攻めて転がしてほしい。今場所も策士の白鵬に作戦を伝授してもらい、土俵狭しと暴れてくれますよ」(相撲担当記者)
先場所は右足の肉離れに苦しんだだけに、ケガだけは‥‥と願いつつ、朝乃山とともに大相撲の醍醐味を伝えてほしいものだ。