白鵬(35)と鶴竜(35)の両横綱の欠場という“緊急事態”で幕を開けた大相撲初場所。新たな横綱の誕生を期待する声が高まるなか、角界では早くも「政権交代」を告げる出来事が……。
モンゴル勢のベテランから学生相撲出身の正代(29)、朝乃山(26)、貴景勝(24)の日本人大関3人衆の時代へと世代交代が進む中、初場所で大関からの一抜けに期待がかかるのは貴景勝だ。相撲界のジンクスに打ち勝てるかどうかが綱取りの鍵を握っている。
「得意としている押し相撲だけでは横綱になれないというのが角界の常識です。直近でも74年に引退した琴櫻が最後で、以降、歴代の横綱は押し相撲だけでなくつかみ合いの四つ相撲も得意としてきました。しかし身長が175センチしかない貴景勝は、高身長が有利になる四つ相撲にはまったく向いていない。結果、学生相撲から愚直に押し相撲を磨き、技能賞も獲得したスタイルで一時代を築こうと燃えています。昨年12月の合同稽古で白鵬に惨敗したのは、綱取りに向け、みずからの手の内を隠して組み合う体勢を続けたからです」(角界関係者)
ハンデを克服して力に変え、稀有な存在の横綱に上り詰めようとしている。角界の常識を覆す勢いは後輩たちにも波及し、まさに勢力図を一変させてしまう様相を見せているのだ。
「同じく埼玉栄高校出身で今場所は前頭三枚目の琴勝峰(21)は、押しでも四つでも相撲が取れるオールラウンダーですが、190センチの高身長を生かした『突き押し』の破壊力が抜群。コロナ禍で出稽古に制限がかけられる中、所属の佐渡ヶ嶽部屋には琴恵光(29)や琴ノ若(23)の幕内に加えて十両や幕下上位の力士が多いため、稽古相手には困りませんでした。今場所は幕内上位として新三役を狙う場所になりそうです」(スポーツ紙デスク)
初場所は貴景勝を先頭に、押し相撲時代到来を告げる機運が高まるばかりだ。一方、今場所をカド番で迎えた正代と朝乃山。とりわけ、勢いにかげりが見えていたというのは「ネガティブ力士」の異名を持つ正代だ。
「一瞬の輝きでした。昨年の9月場所で優勝してブレイクしましたが、新大関として迎えた先場所では初日から3連勝するも、左足を痛めて休場。患部の状態を気にして合同稽古への参加を見送るほどでした。大きなケガをしてこなかった力士だけに、負傷後の調整に苦心しているようです。十両に上がった頃のインタビューで対戦したい相手について『誰とも当たりたくありません』と言い放った自虐キャラが再燃しなければいいのですが…」(相撲ライター)
大関でありながら「未完の大器」を脱することのできない朝乃山は、ぬるま湯気質な所属部屋が伸び悩みの原因と指摘されている。
「学生相撲時代のポテンシャルのみで大関の地位まで駆け上がったものの、もう一皮をなかなかむけずにいます。所属する高砂部屋は相撲部屋の中でも稽古がユルいことで有名。昨年12月に定年となった前高砂親方は、稽古場に出てきても、新聞を読んで2~3分で退出してしまいます。自主性を重んじていると言えば聞こえはいいですが、要はほったらかし。この体質のままだと、伸びしろが余りっぱなしになりそうです」(角界関係者)
親方の交代でのどかな雰囲気が一変すればいいのだが…。
そんな隙だらけの大関のポジションに返り咲こうともくろむのが、関脇・照ノ富士(29)だ。両膝の負傷と内臓疾患に悩まされて、一時は大関から序二段まで陥落する地獄を味わった。
「昨年の7月場所で幕内復帰を果たしたまま優勝した勢いを継続しています。身長191センチの怪力は角界随一で、先場所でも体重162キロの北勝富士(28)の体を宙に持ち上げての上手投げを披露しています。貴景勝との優勝決定戦では押し相撲に圧倒されて、まわしを引きつけることができずに負けてしまいましたが、膝が万全であれば勝負はわからなかった。仮に貴景勝が足踏みするような事態になれば、照ノ富士が出世レースをごぼう抜きする可能性もありますよ」(スポーツ紙デスク)
はたして47年ぶりとなる「押し相撲時代元年」となるか、「奇跡の復活劇場」が継続するか、けだし注目である。