7月7日の七夕に初日を迎えた大相撲名古屋場所。大関・貴景勝の休場は残念だが、令和初の賜杯を手にした平幕の朝乃山(25)と幕内最軽量の炎鵬(24)に熱い声援が飛び交う。がっぷり相撲とスピード&切れ味勝負とタイプは違えど、玄人ファンから相撲女子までもうならせている。
五月場所の朝乃山の快進撃は記憶に新しい。西の前頭8枚目ながら12勝3敗で初優勝。三役経験のない平幕力士に限れば58年ぶり、富山県出身力士では103年ぶりの快挙だった。相撲ジャーナリストの荒井太郎氏が話す。
「朝乃山は横綱・白鵬と同じく本格的な四つ相撲を取ります。身長187センチ、体重177キロという、大横綱を彷彿させる体格で早くから期待を集めていました」
ただ、昨年の九月場所と今年の三月場所では、7勝3敗からまさかの5連敗で負け越すなど、精神的なもろさが指摘されていたが、
「五月場所は終盤でも崩れることなく、豪栄道や栃ノ心といった三役を相手にいい相撲を取って初優勝。これで自信を持ち、それが精神面でプラスに働けばいっそう充実してくるでしょう」(荒井氏)
先場所では阿武咲、玉鷲、御嶽海の3力士に敗れ、押し相撲に弱い面をのぞかせたが、対策は十分だ。スポーツ紙相撲担当記者が解説する。
「相撲の名門・近畿大学出身だけにほぼ完成形で、ここからは得意の右四つをどう磨き上げていくか‥‥。その表れのひとつが、学生時代から憧れの白鵬のもとへの出稽古。7月1日の三番稽古(何番も続けて行う稽古)ではいきなり左上手を引いて寄り切り。白鵬が『お〜っ』と声を出し、ニヤリとしたからね。結局、8連敗を含む2勝9敗だったが、白鵬を本気モードにさせ、『久しぶりに重い、強い、勢いのある、いちばん脂の乗った力士と稽古できた。気持ちいい』と絶賛させた」
最後の一番では、白鵬が本場所中に封印することもある得意の張り手を右頬に炸裂させたが、
「突きや押し相撲相手への立ち合いのアドバイスにも映った。KOを食らった朝乃山も、稽古後に白鵬から右手を差し伸べられると、相撲少年のような顔つきで両手で応じ、謝意を伝えていた。これを機会に、肘を巧みに使うまわしの切り方や巻き返しなどの高等テクニックを教えてもらうことになりそう」(相撲担当記者)
大横綱に心酔する朝乃山は、先場所の途中から始めた禁酒についても、「初めてのことで効果はわからないけど、決めたことなんで」と、続行を宣言。
「場所が終われば、同期で仲のいい東京農業大出身の豊山などと飲みに行くタイプですが、場所中の禁酒は集中力アップにつながっている。史上最多の43度目の優勝を狙う白鵬が右上腕、鶴竜と高安は腰、栃ノ心は左肩に不安を残しているだけに連覇の期待も広がります」(相撲担当記者)
師匠の高砂親方は「8勝すれば褒めてやる」と話したが、朝乃山旋風が再び吹き荒れてもおかしくない。