日本代表の攻撃の中心は鎌田大地(フランクフルト)で決まった。
W杯本番前の強化試合、日本はアメリカ相手に2-0で快勝した。注目すべきはシステムを4-3-3から1年ぶりに4-2-3-1に変更したこと。このシステムはトップ下のポジションがあり、鎌田が一番輝くポジションでもある。つまり4-2-3-1は鎌田の良さを最大限に活かすシステムで“鎌田システム”と言っても言い過ぎではない。
現にアメリカ戦ではチーム最多の5本のシュートを放ち、先制点も決めている。シュートだけではなく決定的なパスも出せるし、キープ力もあるからボールが収まる。ダブル・ボランチの遠藤航(VfBシュトゥットガルト)と守田英正(スポルティングCP)も、ボールを奪ったあと最初に預けるのが鎌田だった。右サイドの伊東純也(スタッド・ランス)と左サイドの久保建英(レアル・ソシエダ)との連携も良く、特に中央でのプレーを好む久保とは何度かポジションを入れ替え、お互いの良さを引き出していた。
4-3-3のインサイドセンターでプレーしたときと違い、全く迷いがなくイキイキとプレー。間違いなく日本の攻撃の中心になっていた。
ただ、だからといって手放しでは喜べない。日本はアメリカをわずかシュート2本に抑える快勝だったが、本大会で対戦する3カ国相手に今回のような試合内容はあり得ない。特にドイツ、スペイン相手に主導権を握って試合を進めることは不可能に近い。つまり本大会のシミュレーションにはならなかったということ。それほどアメリカのデキが悪すぎた。
もうひとつはワントップ。前半を前田大然(セルティックFC)、後半には町野修斗(湘南ベルマーレ)を起用したが、共にシュート0。町野に関しては、まだ代表レベルではないし、本番まで試す時間もない。前田について森保監督は「前線で守備のスイッチになっていた」と評価したが、攻撃面で相手に怖さを与えなければワントップの意味がない。結局、大迫勇也(ヴィッセル神戸)の完全復活を待つしかないのか。いずれにしろ、大きな収穫は鎌田だけだった。
(渡辺達也)
1957年生まれ。カテゴリーを問わず幅広く取材を行い、過去6回のワールドカップを取材。そのほか、ワールドカップアジア予選、アジアカップなど数多くの大会を取材してきた。