イタリアで25日、ドラギ前首相辞任に伴う上下両院の前倒し総選挙が行われ、右派連合が躍進した。その中心を成すのがファシスト党の流れをくむ新興右派政党政党「イタリアの同胞(FDI)」で、党首のジョルジャ・メローニ氏(45)が初の女性首相に選ばれる見通しだ。
「直前の世論調査でも『FDI』が24.7%と断トツで、続いて右派政党『同盟』が12.2%、中道右派『フォルツァ・イタリア』が7.7%。片や、分裂状態の左派は『民主党』が21.5%、『五つ星運動』13%にとどまり、予想通りの展開となりました」(全国紙国際部記者)
メローニ氏は1977年1月、ローマ生まれ。両親の影響により15歳で政治活動をはじめ、ネオ・ファシズムを掲げる極右政党「イタリア社会運動(MSI)」の青年団「青年戦線」に入会。反政府運動に携わっていた。
「MSIは第2次大戦直後、独裁者ムッソリーニ支持者で結成されました。彼女はMSIの後継政党『国民同盟』の学生部でも全国指導者を務めており、中道保守政党『フォルツァ・イタリア』創設者で、当時首相だったベルルスコーニ首相に見込まれ、2008年に31歳という若さで閣僚に抜てきされました。その後2012年、4名の議員とともに新党『イタリアの同胞(FDI)』を結党したわけですが、政治理念はイタリア第一主義。総選挙前こそ対EU批判を弱め、ロシア侵攻を受けるウクライナへの支持を表明するなど、国際社会と同調する態度を表明していましたが、本来は国益が第一でEUには批判的な立場でしたから、就任後の動きが気になるところです」(同)
独メディア「シュテルン」は、かつての彼女のボスであるベルルスコーニ氏が、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と親しく、メローニ氏もかつてプーチン氏を称賛していたことなどを挙げ、民主主義を脅かす“欧州で最も危険な女”として、今後のイタリアの行方に暗雲が垂れ込めている、と報じている。
「今回の選挙戦で最大の争点となったのは、ロシアのウクライナ侵攻などによる物価高騰への対策。これにメローニ氏は大規模な減税や、国外投資家による株式買い付け条件の厳格化などを公約。『イタリアの国益を守る』と強調して、国民の期待を集めました。ドラギ政権は昨年2月、ほぼ全政党から支持されて発足しましたが、唯一そこに加わらなかったのがメローニ氏のFDI。唯一の対抗勢力として政権非難を続けた結果、燃料費や物価高に苦しむ国民からの支持が一気に広がったというわけです」(同)
今年は奇しくも、ムッソリーニ率いるファシスト党員と民兵組織「黒シャツ隊」が首都ローマ入城を果たし、ファシズム時代の扉を開いた「ローマ進軍」から100年目。はたして、労働者階級からのたたき上げである彼女がどんな手腕を振るうのか、国民の注目が集まっている。
(灯倫太郎)