J1の優勝争いより面白いのが毎年恒例の残留争い。今年もその季節がやってきた。
今季の降格条件は17、18位の下位2チーム。そして16位のチームが入れ替え戦に出場することになる。現段階(9月11日、第29説終了時)で18位はジュビロ磐田(勝ち点23 残り6試合)、17位はヴィッセル神戸(勝ち点25 残り7試合)。そして16位がアビスパ福岡(勝ち点28 残り5試合)。ところが11位コンサドーレ札幌の勝ち点が34と入れ替え戦出場の16位まで勝ち点差はわずか6。つまり11位以下の8チームに降格の可能性があるという大混戦だ。
明暗を分けそうなのが「来季はJ2で静岡ダービー」とまでいわれた清水エスパルスと磐田の静岡勢。
清水は低迷を続けていた中、6月に監督を交代。昨年、ブラジルの名門ヴァスコ・ダ・ガマで指揮を執ったゼ・リカルド氏が監督に就任した。さらに今夏、オーストリアでプレーしていた北川航也を復帰させ、セレッソ大阪を退団した乾貴士を獲得、最後にブラジル人のヤゴ・ピカチュウと即戦力の攻撃陣を補強。フロントからすれば「やれることはやった。あとは結果だけ」といったところだろう。現に監督交代後、それまでわずか3得点だったチアゴ・サンタナが覚醒し得点ランキング1位になり、チームの順位も12位まで上げてきた。
一方の磐田は、8月になってから伊藤彰監督を解任。渋谷洋樹コーチを監督に就任させたが、このふたりは大宮アルディージャ、ヴァンフォーレ甲府で一緒に仕事をしていた間柄で、伊藤前監督が渋谷氏をコーチに引っ張ってきたことを考えれば、チームが大きく変わるとは思えない。
また、昨年J2で22ゴールを挙げて得点王に輝き、得点源であったルキアンが福岡に移籍。現在J2で得点ランキングを独走している小川航基は横浜FCに移籍。代わりに補強した杉本健勇はいまだノーゴール。それでも先発で使い続けているという台所事情。ならば今夏、日本人でも外国人でいいから決定力のあるストライカーを補強するべきだったが、ほとんど補強せず最下位に甘んじている。積極的に補強した清水とはあまりに対照的だ。
どこが残留に近いとは言い切れないが、最下位の磐田は厳しいだろう。残り試合数にばらつきがあるだけに大事なことは目に前の試合で勝ち点3を奪えるか、そして直接対決で勝てるかどうか。今季も最終戦までもつれ込みそうだ。
(渡辺達也)
1957年生まれ。カテゴリーを問わず幅広く取材を行い、過去6回のワールドカップを取材。そのほか、ワールドカップアジア予選、アジアカップなど数多くの大会を取材してきた。