「サッチャー2.0」「不貞サバイバー」「アンチ意識高い系」英新首相「鉄の女」の別の顔

 ジョンソン英首相の後任を選ぶ与党・保守党の党首選挙の結果が5日に発表され、リズ・トラス外相(47)が新党首に選ばれ、次期首相に任命された。

「女性が英国で首相に選ばれるのは、3人目。政策や政治スタイルから故サッチャー元首相になぞらえ『鉄の女』の再来、あるいは『サッチャー2.0』とも称されていますが、政治的な手腕はまだ未知数。英国経済は7月のインフレ率が前年同期比で10.1%と、過去40年間で最高を記録するほど猛烈な物価高騰に襲われています。年内には13%を超えるとの予測もある中、はたして彼女がどんな経済の舵取りが出来るのか、その一挙手一投足に英国民すべての視線が注がれてます」(ジャーナリスト)

 では、トラス氏とは一体どんな人物なのか。英メディアの報道によれば、1975年7月生まれで、父親は名門リーズ大学で教鞭をとる数学者。母親は看護師で教師だという。

「オックスフォード大に進んだ彼女は、多くの首相を輩出したことで知られるPPE(哲学・政治学・経済学)を卒業後、2010年に国会議員に。環境・食糧・農村地域相、司法相、女性・平等担当相、外相をという重要ポストを歴任してきた、まさに絵にかいたようなエリートです。プライベートでは保守党の会議で知り合った会計士の夫と00年に結婚。2人の娘を持つ母親でもありますが、かつてタブロイド紙に不貞疑惑を報じられ、相手の男性が離婚に至ったことで、『不貞サバイバー』と騒がれたこともありました」(同)

 そんな彼女が強く訴え続けてきたのが、保守党の伝統的価値観の継承だ。

「欧米では現在、ジェンダーや人種を巡る差別や不公正に高い意識を持つウオーク(woke)という言葉が急速に広まっていて、トランスジェンダーの人のためのトイレ男女共用化や、『母親』を『出産する人』に言い換えることなどを主張する動きがあります。しかし、これに異を唱えるトラス氏は、『女性といえば女性のことだ。私は男女別々の空間を支持し、女性の権利を守る』として、反ウオークを貫いてきました。さらに対ロシア強硬論などの政策が、保守層からの圧倒的支持に繋がったとみられています」(同)

 しかし、キャメロン政権時代はブレグジット反対派で、のちに熱心なEU離脱派に変わったことから「鉄の女」ならぬ、「鉄の風見鶏」と揶揄されることもあった。

「党首選でトラス氏は、国民の生活を守るために300億ポンド(約5兆円)規模の減税を行うと公約に掲げています。しかし、さらに悪化していくとみられるインフレと間近に迫る冬の光熱費の高騰については具体策を打ち出せていない。おそらく大規模な財政出動をしてインフレ率をコントロールするのでしょうが、そもそも財政出動は野党・労働党が主張している政策ですからね。このあたりも国民の疑念を招いているんです」(同)

 このままエネルギーの高騰が続けば、英国は未曾有の「困難な冬」を迎えることになる。英国経済の失速は、欧州全体の後退に直結する。トラス氏が1週間以内に提案する英国経済再生策=トラスノミクスの中身に期待が集まっている。

(灯倫太郎)

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