電力10社の値上げが臨界点へ「年間2万円アップ」「上限リセット」の現実味

 原油高騰、ウクライナ問題、円安と、いくつもの要因が重なってモノの値段が高くなるインフレで、生活の根幹に関わる電気代もバカにならない。東京電力の平均モデルで昨年と比べると、1月から1300円も高くなって、その後もさらに上昇、8、9月は2000円も上回っている。夏の電力需要もひっ迫したが、さらに冬は厳しく、このままいけば年間で2万円以上の支出増はほぼ確実だ。

 そんな中、電力会社の値上げも限界に達している。

「大手電力10社のうち9社が既に電気料金値上げの上限に達していますが、残る中部電力も10月の家庭向け電気料金を引き上げる見通しで、全10社が上限に達することになります。理由は主にウクライナ問題で液化天然ガスと石炭価格が上昇しているためで、上限を超えた分は電力会社の負担になりますが、じゃあそれで家計の負担は収まるかと言えば、必ずしもそうなるとは限らず、上限を超えた引き上げが待っているやもしれません」(経済ジャーナリスト)

 既に上限に達しているにも関わらず、更なる値上げがあるかもしれないとはどういうことか。

 電力会社が公表している電気料金は、電力の自由化以前からある「規制料金」だ。自由化された後も、いたずらに電力料金の値上げが生じないようにこの制度が残っている。電力会社には火力発電所で使う石油、天然ガス、石炭の輸入価格が変動した分を自動的に料金に反映させる「燃料費調達制度」というのがあり、この上げ幅の上限が1.5倍までと定められている。上限を超えた分は電力会社が負担する決まりなのだが、このまま燃料費の値上がりが続けば電力会社の負担が増える一方。そこで電力会社が悲鳴を上げて経産省に泣きつけば、申請して認められた額を基準にしてさらに1.5倍までの値上げが認められるという、価格の“リセット”も可能なのだ。

 さらに言えば、電力自由化でより安価とされた「自由料金」はその名目を完全に失い、より安いはずの自由料金が規制料金より高くなるという逆転現象も起きている。だから8月に入ると東北電力と東京電力が折半で出資していた新電力会社が撤退を表明するなど、電力費用のひっ迫は“際の際”まで来ていると言っていい。
 
 ところが政府の動きは鈍い。

「安倍元首相の横死を受けて行われた7月14日の首相会見で岸田首相は電力問題にも言及しました。『最大9基の原発再稼働』を打ち出しましたが、実は既定路線の再稼働スケジュールを語ったまでで、新しい決断をしたわけではありません。8月24日に行われた会議では、再稼働済みの10基に加え、新たに7基を来夏までに稼働させるという一歩踏み込んだ目標を発表しましたが、こちらは安全上の問題が解決されていない原発も含まれており、先行きは不透明。そもそも8月から導入するとしていた電力ポイントも冬に先送りされ、すべてにおいて継ぎ当て的な政策が目立ちますね」(同)

 ご本人はコロナでしばらく休養とのことだが、いずれにしても早く“検討使”を脱してもらわないことには国民生活は疲弊するばかりだ。

(猫間滋)

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