岸田首相は、10日に内閣改造と自民党人事を行うべく自民党臨時役員会・総務会を8日に開催した。当初、内閣改造は9月上旬を軸に進められていたが、急きょ前倒ししたかたちだ。お盆休み中に熟慮して、とも言われていた内閣改造なぜこれほど早まったのか? 政治ジャーナリストが解説する。
「旧統一教会と国会議員の関係に対する世の中の関心が、予想以上に高まったからです。なかには開き直りともとれる発言で炎上する閣僚もいて、ワイドショーなどでも連日取り上げられ批判が高まりました。その影響で内閣支持率は急落。いわゆる“黄金の3年”で選挙が当分ないとはいえ、このままでは党内からの突き上げも強くなってしまいます。一刻も早く内閣改造をして旧統一教会疑惑を鎮静化させたいとの狙いがあるのは明らかでしょう。実際、旧統一教会と関係の深い議員は起用しない方針のようで、半分以上の閣僚が交代すると見られています」
岸田首相は「さまざまな課題が山積しており、できるだけ早く新体制を築く必要がある」と話しているが、はっきり言って詭弁にしか聞こえない。なぜなら、8月3日に開会した臨時国会はわずか3日で閉会。参議院の議長と副議長を選出しただけでほとんど審議は行われなかった。物価高騰、新型コロナの感染拡大、緊張が高まる中台問題、さらにはエネルギー問題と、岸田首相自身が言うとおり喫緊の課題が山積しているにもかかわらず、わずか3日で閉会したことに唖然とした人も多いのではないか。
「パパ活で批判が高まっている吉川赳議員への辞職勧告決議案も、採決さえされず廃案になってしまいました。選挙直後の臨時国会は儀礼的に短期間で閉じるのが慣例とはいえ、リーマン・ショックのときは90日以上に会期が延長されましたし、民主党政権時に発生した東日本大震災のときも50日以上、臨時国会が延長されました。岸田首相は3日の自民党両院総会で『戦後最大級の難局に直面している』と述べましたが、その割にはずいぶん悠長だな、というのが率直な印象です」(同)
与野党はコロナ対応をめぐり8月19日に衆参の厚生労働委員会で閉会中審査を開くことで合意しているが、日数等はまだ調整中でどこまで踏み込んだ議論がなされるかは不透明だ。ましてや、旧統一教会の問題や物価高騰で庶民の負担がいや増すばかりの経済問題などは、秋の臨時国会まで持ち越される公算が大きい。
「ある意味、岸田首相は何もやらないことで高い支持率を維持してきたとも言えますが、あまりのやらなさすぎに人々の不安はかなり高まっています。とりわけ、経済対策については“新しい資本主義”などとよく中身のわからないものを掲げたうえに、とくに打つ手がないのが現状です。このままでは、日本経済は浮上する道筋すらみえません」(同)
就任当初、「聞く力」を自負していた岸田首相も、いまや「聞くだけ」の“なんもしない”総理になってしまった印象だ。相も変わらず「検討します」を連発して「検討使(遣唐使)」ぶりを発揮している場合ではないのだが‥‥。
(加賀新一郎)