2020年から2年間、コロナ禍によりコンサートなどの延期や中止が相次いだ。ライブ好きのエンタメファンには「死んだも同然」のような辛い日々が続いた。でもここにきて、外国人の入国も規制緩和され、堰を切ったように海外の大物アーティストたちの日本公演が決まっている。
来日するアーティストの名前が判明するたびに、ネット上では「絶対に行きた〜い」「チケット当たりますように」など、歓喜の声があがっているが、同時にとても大きな問題も浮上している。それがチケット代。
7月1日、人気ロックバンド「マルーン5」の12月のドーム公演が発表された。そこでチケットを確認してみると、アリーナ前方のVIP SS席が10万円、アリーナ指定席のVIP S席が3万8000円、それより後方は1万5800円などとにかく高額。もちろん、この状況はマルーン5だけではない。
「9月にベルーナドーム(西武ドーム)で2日間公演を行うレディー・ガガはVIP席10万円、アリーナ前方5万円、それより後方が1万8000円という価格。それでも即日ソールドアウトですから、買える人は買えるんです。また若者のカリスマ、ビリー・アイリッシュも8月に来日しますが、10万円はないもののステージに近い前方が2万5000円、それ以外が1万9000円と、こちらも少し前の時代ならオペラでも観に行くような値段になっています。その価格帯が発表されると、特にBアイリッシュなどは高校生などティーンに人気ですから『このチケ代でどうやったら見に行けるの?』『地方から行ったら10万円かかっちゃう』と泣きの投稿が多数されています」(エンタメ誌ライター)
円安の影響も指摘されているが、実はそれだけではないのだとか。
「もともと日本は海外アーティストのチケット代は安かったんです。90年に初来日したローリング・ストーンズが、東京ドームで10公演おこない全席1万円で当時は驚かれたのですが、海外ではストーンズのチケット価格はもっと高かった。日本では上限1万円ぐらいでその後十数年はキープされていましたから、実はラッキーだったのです。ちなみにニューヨークでは、スタジアムの最後方でも2〜3万円ぐらい取られるライブがよくあります。それを考えると不幸なことに、日本もついに海外価格に追いついたということなのかもしれません」(前出・エンタメ誌ライター)
ステージ周りの席をVIP席として数倍の価格に設定するのは、ここ十数年の間にメジャーになった商法。つまり、今や有名アーティストのライブは音楽を聴きに行くのではなく、アーティストに会いに行く。そこに価値観を見出せるか否かで高額チケット代を許容できるかが決まるのだとか。
でも、たくさんのライブを気軽に見たいはずの多感なティーン世代には頑張っても無理な価格。バイト代でいくつものライブに行けた80年代や90年代生きた世代から見ると、ちょっと可哀想かも…。
(塚田ちひろ)