習近平「ゼロコロナ」失政で国民の怒り爆発!がぜん存在感を増した人物とは

 かたくなな「ゼロコロナ」政策により、経済活動に多大な損失を与えた中国の習近平国家主席に今、逆風が吹き始めている。

 事の起こりは、5月18日のこと。「ゼロコロナ」政策が叫ばれる中、中国政府のナンバー2である李克強首相が雲南大学を視察した際、多くの関係者に囲まれたにも関わらず、マスクをつけていなかったことが、波紋を広げているのだ。

 中国問題に詳しいジャーナリストが解説する。

「李首相のノーマスクでの視察映像は、すぐに雲南大学の微博(中国最大のSNS)にアップされ大きな話題を呼びました。人が密集した中でも李氏はマスクを着けず笑顔で会話しており、コロナを気にする様子はありませんでした。これが、ゼロコロナに固執する習氏の方針に明らかに反するとして、微博上では『李首相がついに習近平に反旗を翻した!』と大騒ぎになったんです。ところが翌19日の国営新華社傘下のインターネットサイト『新華網』などメディアには、李氏が雲南で経済安定と雇用確保に関する会議を主宰したとの報道はあったものの、動画も写真も掲載されませんでした」

 ただし国際放送では、ラジオフリーアジア(RFA)が「李克強は異例な行動で態度を表明した」と報道。ラジオフランス(中国語版)も「李氏の言動は“習降李昇”の噂を増幅させた」と取り上げたことで、国内外で「習近平の内政と外交の失敗で、長老や党幹部らが李克強支持に回った」といった噂が拡散している。
 
「『ウォールストリートジャーナル』(中国語版)も、『李克強は習近平の影から脱した』とする記事を掲載してますが、たしかに習近平は2012年に共産党総書記に就任して以来、権力掌握に腐心してきました。経済については本来、李首相が主宰する国務院の責務ですが、習氏はその上に自分が管轄する小グループの責任機関を置き、李氏を肩書だけで決定権のない立場にした。しかし、厳しいロックダウンにより、経済が疲弊。もともと市場経済化を重視する李氏の考えに、国民の支持が集まったと伝えています」(同)

 それがすぐに習氏の“総書記3期目断念”につながるわけではないが、習氏が李氏の大胆な言動を黙認せざるをえなくなっているとの専門家の分析もあり、風向きが微妙に変化してきていることだけは間違いないようだ。

 首相職を2期10年間務め上げた李克強氏だが、追い風を受け秋の第20回党大会では、より重要なポストを占めるよう派閥を上げて動くことが予想される。

 権力闘争の行方に注目が集まっている。

(灯倫太郎)

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