血液のがんやパーキンソン病、初期の認知症など、健康不安説が取りだたされるプーチン大統領(69)。そんな中、ロシアだけでなく、世界のメディアが最大の関心を寄せているのが「ポスト・プーチン」問題だ。
「ロシアでは2年後の2024年3月に大統領選がおこなわれますが、当然プーチン氏も5選目を狙っていました。ところがウクライナ侵攻で“戦争犯罪人”扱いされているため外交はしづらくなり、健康面にも不安がある。それでも権力の座に留まりたいと考えるプーチン氏のこと。腹心を後継大統領に据え、自らは国家評議会議長に退き『院政』を敷くのでは、というのが西側の見立てです」(ロシア情勢に詳しいジャーナリスト)
2年後といえば、プーチン氏は71歳。男性の平均寿命が68.2歳とされるロシアでは、完全なる“後期高齢者”となるわけだが、いずれ国家評議会議長に退くことを考えてか、20年には憲法を改正。議長の権限を強化している。
問題は、ポスト・プーチンに誰がなるかだが、ロシアの独立系メディアやテレグラムで有力候補として名前が挙がっているのが、メドベージェフ安全保障会議副議長(56)、ソビャニン・モスクワ市長(63)、キリエンコ大統領府第1副長官(59)、パトルシェフ安保会議書記(70)の4人。
「後継候補ナンバーワンとされるメドベージェフ氏は、2012年にプーチン氏の鶴の一声で退陣したものの、4年間大統領を務めてきた実績があり、プーチン氏からの信頼も厚い。一方、キリエンコ氏はクレムリンの政治戦略を担当、ウクライナ対策では責任者にも抜擢された、首相経験もある野心家だと言われています。また、ソビャニン市長はチュメニ州知事やロシア大統領府長官、副首相を歴任したプーチンのブレーン。そしてもう1人、有力視されているのがパトルシェフ書記で、同氏はKGB、FSBといった情報機関出身でプーチン氏最大の腹心。1999年、首相代行に任命されたプーチン氏の後任としてFSB長官代行を経て長官に就任し、プーチン政権下では同庁長官として、チェンチェン問題や今回のウクライナ侵攻でも情報戦で重要な役割をはたしている。プーチン氏への絶対的忠誠心を持つタカ派中のタカ派で、西側が『ロシアでもっとも厄介』とする人物です」(同)
パトルシェフ氏は昨年末、メディアで「ウクライナ指導部はヒトラー並みの悪人ぞろいだ。キエフの政権は人間以下の存在だ」と酷評して波紋を広げたこともある。仮に同氏が後継となった場合、ロシアによる更なる暴挙勃発の可能性も出てくる。
ロシアでは大統領が執務できなくなった場合、首相が大統領代行を務め、大統領選が3カ月後に行われるが、戦争続行か停戦かはむろんリーダーの決断次第。今後の世界情勢を占う意味でも、ポスト・プーチンの行方に世界の注目が集まっている。
(灯倫太郎)