今日のロシアは明日の中国と言わんばかりに緊張感が高まるアジア情勢。では、中国はどのようなプロセスで台湾進攻作戦を実行するのか。軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏は、「まず、サイバー攻撃による大規模な奇襲は常套手段でしょう」と前置きしてこう続ける。
「軍関連施設や公共インフラの通信を断絶して孤立させます。平時からマルウェアやバックドアなどのウイルスは仕込み済み。有事にスイッチを押すだけで起動する仕組みになります」
台湾の軍事衛星や通信ネットワークを最初に破壊。政府や軍からの指揮系統を遮断し、優位に立ったところで、すかさず第二の矢が放たれる。怒濤の波状攻撃を軍事ジャーナリストの村上和巳氏が解説する。
「ロケット軍によるミサイル攻撃で防空拠点の破壊が始まります。使われるのは、コードネーム『東風12号』をはじめとする射程距離300〜600キロの短距離弾道ミサイル。まずは、中国近郊ながら、台湾が実効支配する金門島と馬祖島の軍事基地を狙い撃ちします。ほんの数日で壊滅してしまうでしょう」
台湾への最前線基地を落としたら、四方を海に囲まれた本島上陸に向けた拠点の確保にシフトする。
「台湾の西方約50キロに位置する澎湖島です。沖縄でいうところの慶良間諸島のような小さな島々が集まる台湾の玄関口。ここを強襲揚陸艦による上陸作戦の拠点とします」(軍事ジャーナリスト・井上和彦氏)
無論、中国からは台湾本島も短距離弾道ミサイルの射程圏。台湾海峡の南西に集中する主要都市や軍基地に、容赦ないミサイルの雨が降り注ぐこととなる。
「空軍基地が併設されている台北松山空港や米国から仕入れた高性能なレーダーを配備している新竹が標的になる。続いて、海軍基地のある高雄や山中のトンネルに戦闘機を保管している花蓮を制圧して反撃の芽を摘んでしまう。台湾側も『PAC-3』や『天弓』による迎撃態勢を整えていますが、中国が保有する短距離弾道ミサイルはざっと見積もって1000基以上はある。台湾の迎撃能力をはるかに超えています」(台湾在住ジャーナリスト)
まさに、台湾本島は壊滅的なダメージを受けることになるが、続いて実行に移されるのは「斬首作戦」だ。
「飛行艇やヘリボーンで台北市街地に、人民解放軍のパラシュート部隊が降り立ちます。そこでは、要人の拉致や暗殺が遂行される。確実に台湾国内は大パニックに見舞われるでしょう」(黒井氏)
そのまま、わずか2〜3カ月の間に台湾は制圧される恐れがある。とはいえ、ここまでの流れは、中国の理想通りに進められたひとつのシミュレーションに過ぎない。台湾有事に軍事支援を約束した米国が未登場なのだから。
*中国VS日米同盟「10.1台湾有事」シミュレーション【3】につづく