6月6日、日本銀行の黒田東彦総裁は東京都内でおこなわれた講演の中で、食料品やエネルギー価格などの値上げが相次いでいる状況に「日本の家計の値上げ許容度も高まってきている」との見解を示したことが、物議を醸している。
黒田総裁は値上げの許容度が高まっていることの「ひとつの仮説」として、コロナ禍の行動制限によって1世帯あたりの貯蓄額が増えていることを指摘し、「家計が値上げを受け入れている間に、良好なマクロ経済環境をできるだけ維持し、賃金の本格上昇につなげていけるかが当面のポイントだ」と説明。
3日の参議院予算委員会では立憲民主党の白眞勲参院議員から「最近食料品を買った際、以前と比べて価格が上がったと感じるものがあったか」と値上げが続く中で実際に買い物をした際の感想を求められた黒田総裁は、「私自身、スーパーに行って物を買ったこともありますけど、基本的には家内がやっておりますので、物価の動向を直接買うことによって感じているというほどではありません」と答弁し、《庶民の感覚がまるで分かっていない》と批判を受けていた。
それだけに、今回の発言には《値上げを家計が受け入れてるってさすがに認識が浮世離れしすぎ》《値上げを受け入れている?値上げを拒否して食料品を買わなかったら生きていけないんですけど》《今の値上げを良しとしている人なんていないし、これまでさんざん金融緩和してきて賃金なんてこれっぽっちも上がっていませんが?》など怒りを通り越し呆れ果てた声が多く見られた。
「黒田総裁の発言には立憲民主党の小沢一郎衆院議員も『国民に直に聞いてみたか? 妄想か? 御自分の家計を基準にしているのか?』と怒りのツイートをしていますが、本当に何を根拠として値上げ許容度も高まってきていると言っているのでしょうか…。多くの消費者は物価の上昇によって家計を圧迫されていますし、拒否できるものなら拒否したいというのが本音ではないでしょうか。日銀総裁に庶民感覚を持てというのは難しいかもしれませんが、もう少し国民感情を理解した発言をしていただきたいものです」(経済ジャーナリスト)
全国的な批判の声を受け黒田総裁は7日、「家計が自主的に値上げを受け入れているという趣旨ではなかった」と釈明。8日の国会でも「表現は全く適切ではなかった」と許容度発言を完全撤回したが、庶民の怒りは収まりそうにない。
(小林洋三)