世界の福本豊 プロ野球“足攻爆談!”「楽天躍進の原動力は西川の意地や」

 楽天の勢いが止まらん。5月10日のロッテ戦で11連勝を飾り、勝率はついに8割に到達した。その日、阪神が10度目の完封負けを喫したのに対し、楽天の負け数はわずか6(同時点)。驚異的な快進撃の一番の立役者は、1番打者で固定されている西川遥輝やと思う。

 1番打者の大事な役割は出塁すること。打率は3割前後やけど、評価すべきは4割台半ばの出塁率。四球の数は12球団トップで、いかに投手に警戒され、球数を放らせているかがわかる。打点の数も浅村に続くチーム2位。チャンスメイクだけでなく、ポイントゲッターの役割も果たしている。昨年を含めて過去4度の盗塁王に輝いた機動力も備えているし、最高の1番バッターや。

 楽天からしたら笑いが止まらない。報道によると年俸はわずか8500万円。これまでの実績から考えても格安の契約やった。確かに昨年はオフに目指していたポスティングでのメジャー移籍が成立せず、気落ちしたのか打率2割3分3厘の散々な成績やった。球団からすると、推定年俸2億4000万円は高すぎると考えるのはわかる。それでも、日本一にも貢献した生え抜きの功労者に対して、ギャラが高いからという理由だけで自由契約とするのは意味がわからない。

 チーム内で暴力をふるった一件で巨人にトレードされた中田の場合は仕方ないにしても、30歳の人気も実力もある中心選手を放出する理由は何だろう。応援してきた日本ハムのファンも「何で?」と思ったはず。稲葉GMに嫌われていたのか、監督に就任した新庄に「いらん」と言われたのか。稲葉GMの当時の説明では「選手が取得した権利(FA権利)を尊重し、ノンテンダーとすることを選択しました」となっていた。ノンテンダーというのは聞き慣れない言葉やったけど、つまり保有権を放棄したということ。

 良いか悪いかは置いといて、今の選手はFA権利を獲得して給料を上げるというモチベーションがある。ところが、西川の場合は期待して交渉に臨もうとしたら「はい、サヨナラ」やから。絶対に見返したるという気持ちになって当然。今の成績は西川の男の意地の表れやと思う。新庄監督の日本ハムは戦力不足で苦戦しているだけに、外から見ていると「不動の1番で西川が活躍していれば」と考えてしまう。

 やっぱり頼りになる1番打者がいるチームは戦い方が安定する。巨人を見ていてもよくわかる。今年は吉川が1番に固定されて、打率3割4分1厘をマーク。チームの開幕ダッシュの立役者となっていた。ところが、5月4日の広島戦で死球で左肩甲骨を挫傷し、登録を抹消された。その数日前にチームリーダーの坂本が右膝を痛めて抹消となっていたから、1、2番が同時に消えたことになる。そこから打線は崩壊し、チームも首位から転げ落ちた。吉川は今年こそ覚醒したかと思っていただけに、まさに「好事魔多し」。調子がいい時こそ気をつけないといけない。常に故障に泣かされるイメージが定着しているから、復帰したら今度こそケガと友達付き合いをやめなアカン。いつも言うように「無事これ名馬」。主力に離脱されるのがチームにとっては何より痛い。故障を防ぐのもプロの技術や。とはいっても、コロナに感染するのだけはどうしようもない。ほんま、早く終息してほしいもんやで。

福本豊(ふくもと・ゆたか):1968年に阪急に入団し、通算2543安打、1065盗塁。引退後はオリックスと阪神で打撃コーチ、2軍監督などを歴任。2002年、野球殿堂入り。現在はサンテレビ、ABCラジオ、スポーツ報知で解説。

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