西武鉄道が「黄色い電車」終了、無塗装の“中古列車”へ置き換え宣言

 西武グループは5月12日に中期経営計画(21〜23年度)の進捗状況を公表。鉄道事業では高架や地下化での大規模な立体交差事業での大規模投資や、23年にとしまえん跡地でオープン予定のワーナーブラザースのハリー・ポッターのスタジオ・テーマパークに合わせた駅のリニューアル、西武新宿駅とJR,東京メトロをつなぐ地下街の開発計画などについての報告を行った。

「特に立体化は最終的には区内から西東京市に至る大部分を立体化させるという大型投資で、22年度は総額245億円を投じるとしています。手始めに行われている西武線の立体化では、地下化で7カ所、高架化では5カ所の踏切が無くなるので踏み切り待ちのイライラも解消されて、安全面からも沿線住人にとっては非常にメリットが大きい」(経済ジャーナリスト)

 過大な投資を行うには原資が必要だが、これとは別に西武鉄道ではホームドアの整備などで23年春の運賃値上げも併せて発表された。これは国にそういった制度があるからで、先に値上げを発表したJR東日本や東京メトロと事情は同じ。コロナで客足は落ち、今後は人口減もあって輸送人員の回復は見込めるべくもないのも他社と同じで、この辺りは時代の要請で仕方がないところだろう。

 ところが、そのための経費節減で掲げられた別の施策に、とくに鉄道ファンから注目が集まっている。こちらも23年春から実行される予定で、公表された資料の「サステナ車両の導入」とされる部分だ。

 これだけでは意味が分からないので、資料を詳しく見ると、「無塗装車両、VVVFインバーター制御車両等の他社からの譲受車両を当社独自の呼称として定義」とある。

「これでもよく分かりませんが、意味を補足しながらかみ砕いて言うと、古い車両はエネルギー効率が悪いので、最新の制御車両に入れ替えるにあたって、他社から譲り受けた車両に置き換えるということです」(同)

 つまり、“新車”を導入するのはあまりにコストがかかるので、他社から“中古”を譲り受けるのだという。よく途上国で、日本で使われなくなって払い下げられた古い車両が走っていたり、そこまではいかなくとも、地方の鉄道で都市部の大手鉄道の古い車両が再利用されていたりする。これと同じように、西武線では他社から譲り受けた車両を走らせるというのだ。だから西武線お馴染みの黄色い車両ではなく、無塗装の車両になるというわけだ。

「西武鉄道によると、22年度末時点で全車両数は1227両ですが、このうち56.2%を無塗装とVVVF車両に置き換えるとしています。詳細は今後ですが、対象は多摩川線や多摩湖線といった郊外の枝線になると思われます。どこの線でどの無塗装の車両が走るのか、マニアの間では車両の行く先と、西武線の対象区間を予想したコラ画像がSNSでアップされています」(同)

 立体化で西武線沿線の景色は大きく変わるが、郊外でも無機質な銀の車両が走る風景に変わりそうだ。

(猫間滋)

ビジネス