ロシア、制裁への報復で「佐渡金山」世界遺産登録に嫌がらせか

 岸田政権はロシアに対し、貿易面での優遇措置である「最恵国待遇」を撤回、主要7カ国=G7並みの制裁措置を行ってきたが、ブチャでのジェノサイドが明るみになるや、さらにぜいたく品の輸出をストップ、駐日ロシア大使館員8人の追放、ついにはロシアからの石炭禁輸でエネルギーにも制裁の手を加えることになった。

 するとロシアからは、プーチンとメドベヴェージェフ政権でロシア連邦議会連邦院議長を歴任した大物政治家が「ロシアは北海道の権利を有する」と、北方領土を飛び越えて北海道に手を出すような過激発言を行うなど、ウクライナ戦争の余波がいよいよ日ロ関係にも広がりつつある。

 そして思わぬ形で“飛び火”しそうなのが、佐渡金山の世界遺産登録だ。朝日新聞や毎日新聞は、自民党内で上がる懸念の声を伝えている。

「4月8日には自民党内で世界遺産登録に向けた会議が開かれたのですが、この場でもロシアからの嫌がらせを懸念する声が上がったといいます。世界遺産はユネスコの民間諮問機関がまず審査を行って、それが通れば『登録勧告』が行われます。そしてこれを受けて21カ国の委員国で構成される世界遺産委員会という場所で再び登録の是非が諮られます。特に問題がなければここは勧告に沿ってスムーズに通過しますが、反対国があった場合は3分の2以上の国の賛成を得る必要が生じます」(全国紙記者)

 その世界遺産委員会は今年の6月19〜30日に開催されるが、なんと議長国はロシアで、ロシア国内で開催される予定。ただウクライナ戦争の勃発で、米国、英国など46カ国から開催地変更の要望が出されており、今後は不透明だ。そして委員国を見れば、議長国のロシアのほか、インド、サウジアラビアといったロシア寄りの国名もある。21年に中国が任期を終えたのは不幸中の幸いだろう。

「佐渡金山では朝鮮人の強制労働があったとして反対の韓国は、委員国に反対の方向で働きかけをしています。日本はロシアに対して賛同を求める書簡を送っていますが、いまは回答が得られるような状況にはありません。むしろ親ロシアの国々が同調して反対に回る可能性がある。事態はなんとも複雑化しています」(同)

 中国で開催されたばかりの五輪では、スポーツと政治の問題が顕在化したばかりだが、今度は世界遺産でも政治の問題が前面に出てきているのだ。

(猫間滋)

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